定額お布施 あなたなら? 法要に僧侶 ネットで派遣サービス

西日本新聞

 ●「相場分からない」増える利用者 「本来の意味失う」仏教界危機感 
 法事・法要でお経を上げてくれるお坊さんを定額で派遣するサービスが、インターネットで広がっている。いくら包めばいいのか迷う通常のお布施と違い、料金が明確なことが歓迎されている。仏教界では「宗教のビジネス化だ」「お布施本来の意味が失われる」と危機感も高まっている。

 ▼追加の費用なし 檀家でなくても

 昨年12月、大手通販サイト「アマゾン」に登場した「お坊さん便」。全国一律、税込み3万5千円で、自宅や墓地での法要に僧侶を派遣する。葬儀関連会社の「みんれび」(東京)が3年前から自社サイトで始めていたサービスだ。

 法要は、普段付き合いのある寺に直接頼む人が多く、お布施に加え、交通費や食事代などを渡すことも少なくない。日頃から金品を寄進するような寺の檀家(だんか)でないと、引き受けてもらえない場合もある。

 一方のお坊さん便は交通費も含む定額料金で追加費用がなく、誰でも頼める。高額なお布施に悩む人や檀家になりたくない人、法要の頼み方やお布施の相場が分からない人の利用が多いという。ネットでは他にも複数の企業が、定額サービスを取り扱っている。

 こうした動きに、宗派を超えて組織する全日本仏教会(全仏)は3月、「お布施は宗教行為に対する対価ではなく、定額にすることは本来の宗教性を損なう」と、アマゾンに販売中止を要請した。アマゾンは応じていない。

 ▼「徳を積む修行」 一方で不信感も

 定額にするとなぜ「宗教性を損なう」のだろう。

 本来、お布施には相場がなく、僧侶は「お気持ちをお包みください」とその人にできる精いっぱいの施しを勧める。日蓮宗浄泉寺(北九州市)の僧侶渡辺晃司さん(31)は「お布施は、人が無意識に執着してしまうお金を手放すことで徳を積む修行。亡き人のためにどれだけして差し上げたいか考えるのも修行で、他人が金額を決めたり無理強いしたりするのはお布施とは言えない」と説明する。

 渡辺さんは定額サービスの登場を「安い、速い、煩わしくないという自分の都合中心、経済優先の価値観が表れている」と嘆く。だがその原因は「私たち僧侶の側にある」とも話す。

 実際には法外なお布施を要求する寺もあり、不信感から寺離れが進み「仏様の教え」を伝える機会が減っている側面があるからだ。

 ▼負担を減らして 関係見つめ直す

 北部九州の僧侶Aさん(50代)は今年から、みんれびに登録し、九州各地で法要を行っている。

 自分の寺の信徒は150人ほどで「継続的に財政支援してくれるという意味での檀家はゼロ」。だが僧侶にも生活があり寺を維持する資金は必要だ。「それを信徒だけに頼ると高額なお布施になってしまう。私はそうした負担を掛けたくないと思った」と事情を語る。

 最近も、別の寺の檀家という知人から「本堂の建て替え費用150万円を振り込むよう頼まれた」と相談を受けた。「こんな金額で葬儀はできない」とお布施を追加請求する僧侶を見たこともある。

 ネットを通じた依頼で遠方まで法要に行くと、交通費を差し引いた残りはわずかになる。それでも「収入の乏しい人も安心して利用でき、人助けにもなっている」と感じている。

 お坊さん便に登録する僧侶は現在約600人で、今年7~8月の利用件数は「前年同期の2倍」という。みんれびは「檀家不足に悩むお坊さんたちのニーズにも応えている。利用者と僧侶、困っている両者をつなぐサービスで、故人を悼む大切な習慣を残していきたい思いは(全仏と)同じ」と話す。

 全仏は、9月に設けた協議会で今後の対応策を話し合う考えだ。「寺院と人々との関係性が希薄になった原因を見つめ直し、しっかりと襟を正していきたい」という。


=2016/10/22付 西日本新聞朝刊=

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