小学校英語(1)1年生から 早期教育のうねり

西日本新聞

 「レッド・バード」「ブラウン・ベアー」

 小学2年生の教室から弾む声が聞こえてきた。福岡市西区の愛宕浜小学校。2020年度から小学校では3年生から英語(外国語活動)を学ぶようになるが、同校ではもう1年生から学んでいる。文部科学省の特例校制度などを活用した取り組み。同じような形で、全国の公立小では既に1年生から学んでいるケースも少なくない。

 子どもたちの輪の中心には、カナダ出身のゲストティーチャー(GT)、リーガン先生がいた。赤い鳥や茶色の熊の絵を掲げ、クイズ形式で問い掛ける。正解すると「エクセレント」。笑顔でたっぷり褒めた。

 この日の学習テーマは「自分が選んだどうぶつに色をぬろう」。子どもたちは、先生から教材の塗り絵カードとクレヨンを受け取る際、「プリーズ」を付けることも求められた。「くれ」ではなく「ください」という意味合いを、動作と一緒に学ぶ。舌を丸める「L」と「R」の発音の違いも。

 ゲームや塗り絵をしながら、英会話を身に付ける授業は、確かに楽しそうだった。

 この授業、英語に早く慣れ親しむため「なるべく日本語を使わない」がルール。でも、担任の平山望教諭が「ルック・アット・ミー」と呼び掛けても、子どもたちはきょとんとしていた。平山教諭はたまらず「見て、見て!」。そうだよな。まだ、簡単な英単語の発音を学んでいる段階だから。

   ◇   ◇

 愛宕浜小では現在、1、2年生が年間10こま、3、4年生が同35こま(週1回)、5、6年生が同70こま(週2回)、英語を学んでいる。20年度から導入される新学習指導要領。その一歩先をにらむ。年間授業時間数は増やさず、総合学習や午後の「チャレンジタイム」(15分間)を活用しているという。

 目指しているのは「高校卒業時に英語で討論や交渉ができるレベル」。特例校制度を活用し、15年度から同じ校区内の市立小中高校(愛宕浜小-姪浜中-福岡女子高)が連携。12年間の英語教育の積み上げで、グローバル化時代に対応した人材を育てようとする狙いがある。

 いわば、小中高連携による英語力の底上げ作戦だ。

 シンガポールの小中学校に赴任した経験がある森宏介校長は「早く始めるほど、使える英語が身に付き、世界は広がる」。発音にこだわる「オール・イングリッシュ」の英語漬け授業も、「必要に迫られれば、言葉が出てくる」と考えてのことだ。

 4年生の授業では、英語で買い物をする場面を設定し、学習していた。「チェンジ」「ビッグ」「スモール」…。学校ではまだ習っていないと英単語も、子どもたちの実生活には「カタカナ英語」として浸透している。子どもたちはペアを組み、英単語を巧みに組み合わせ、会話を実現していた。

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 小学校英語をいつから、どんな形で学ぶことが、日本の子どもたちにとっていいのか-。英語教育早期化の是非論はかまびすしい。

 国語の授業では、1、2年生は日本語の文章に「慣れ親しむ」「リズム感を学ぶ」「あらすじをつかむ」という段階だ。「日本語学習の土台がしっかりしてから、外国語は学ぶべきだ」「鉄は熱いうちに打て。それではグローバル化に対応できない」。賛否が渦巻く中、英語教育早期化の流れが加速している。

 実際、やってみて、どうなんだろう? 愛宕浜小児童の大半が進学する姪浜中学校に向かった。同校の田中大三教頭は「ほかの小学校出身の生徒よりも英語を使う抵抗感がなく、発音も上手。対話能力は高い」。うーん、でも、逆に学力格差の拡大も心配になる。

 〈To be or not to be - that is the question〉(このままでいいのか、いけないのか、それが問題だ)

 ◆小学校英語 小学5、6年を対象に2011年度から「外国語活動」が必修化された。英語に慣れ親しむのが狙いで、学習内容は「聞く・話す」のみ。教科外の扱いで、成績評価はない。現在の授業時間数は年間35こま。
 20年度からは、この5、6年の外国語活動が、正式な教科となり、授業時間も週2回の年間70こまに倍増する。教科書で学び、「読む・聞く・話す・書く」の4技能で成績評価される。現在の外国語活動は3、4年に前倒しされる。20年度からの完全実施を前に、移行期間として18年度から一部の小学校では、3年から英語を学ぶようになる。

=2016/11/06付 西日本新聞朝刊(教育面)=

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