「かつら選び」「メーク術」で支える 外見の変化に悩むがん患者へ

西日本新聞

 がんは、日本人の2人に1人が生涯のうちに経験する病気だ。治療の副作用で髪が抜けたり肌が黒ずんだりと、外見の変化に苦しむ患者も少なくない。こうした悩みに寄り添い、かつら選びやメーク術を指南する支援の動きが広がってきた。

 ●少しの工夫

 10月下旬、福岡市南区の九州がんセンター。看護師の川野友美さん(29)が紙芝居を使い、抗がん剤の副作用で生じた脱毛や皮膚の変色などへの対処法を、患者たちに説明していた。

 「かつらは安くても大丈夫。付け心地と、自分に似合うかどうかで選んで」「眉毛を書き足し、チークを入れるだけで元気に見えますよ」

 8月から毎月第4月曜日に開いているアピアランス(外見)ケアの無料講座。参加した30代の女性患者は「爪のささくれが家事の妨げになっていた。マニキュアなどで保護するケア方法が役に立ちそう」と話した。

 7月には病院内に「アピアランスケアルーム」を開設、かつらの見本を置いて、自由に試着できる環境も整えた。川野さんは「少しの工夫で見た目の悩みをカバーでき、普通に日常生活を送れる。患者さん同士が悩みを共有できる場にもなってほしい」と話す。

 ●つらい脱毛

 国立がん研究センター中央病院(東京)は、全国に先駆け、2013年にアピアランス支援センターを開設した。野沢桂子センター長は「がん治療による外見の変化は、やむを得ないものとして受け止められ、あまり研究が進んでこなかった」と指摘する。

 野沢さんらが09年に抗がん剤治療中の患者に身体症状の苦痛度を尋ねたところ、男女ともに脱毛やむくみなどを挙げた。特に女性では、吐き気や全身の痛みを抑えて頭髪の脱毛が1位だった。乳がん患者では上位20種類の悩みのうち12種類が顔のしみや爪の割れなど外見に関わる症状だった。

 センターは、外見の変化に悩む患者に適切な情報を届けてもらうため、今年8月に医療関係者向けの「がん患者に対するアピアランスケアの手引き」(金原出版)をまとめた。また全国のがん診療拠点病院のスタッフに対し、外見ケアに関する研修会も続けている。これまでに約280人が受講した。福岡の川野さんもその一人だ。

 がんは、医療技術の進歩で生存率が上昇し、厚生労働省の推計では、働くがん患者は約32万5千人。外見ケアへの需要は一層高まる。野沢さんは「誰もが簡単にできるケアで、その人らしくいられるよう支えていくことが大切」と言う。

 ●自分らしさ

 支援の動きは民間にも広がっている。

 東京都江戸川区の48歳の女性=大分県出身=は、3年前に卵管がんを患い、抗がん剤の副作用で毛が抜け、色素沈着で肌は青黒くなった。「鏡の中の自分が遠い世界に行ってしまったみたいでつらかった」。かつらを着け、化粧をしたことで自分らしさを取り戻せたという。

 今は治療を終え、4月からNPO法人メディカルメイクアップアソシエーション(MMA、東京)の講座で化粧法を勉強中だ。斉藤さんは「外見の変化に落ち込み、家に引きこもりがちの人も少なくない。メークによって前向きな気持ちになれると多くの人に伝えたい」と語った。

 MMAは、肌の変色や傷痕をカバーするメーク技術を普及しようと2001年に発足。最近はがん患者支援にも力を入れ、九州でも約30人のアドバイザーが活動、相談に応じているという。

 メディカルメイクアップアソシエーション=03(5524)8661。


=2016/11/12付 西日本新聞朝刊=

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