<49>流転の末の看板メニュー 中華そば おさみ(福岡県うきは市)

西日本新聞

「遊楽」の看板も掲げる店内で鹿田修さんは「レシピを完成させるまでに苦労もしているので、いずれは豚骨も復活させたい」と語る 拡大

「遊楽」の看板も掲げる店内で鹿田修さんは「レシピを完成させるまでに苦労もしているので、いずれは豚骨も復活させたい」と語る

福岡県うきは市吉井町1242の1の6。中華そば680円、辛味まぜそば680円。みそそば780円。午前11時半~午後2時半、同6時~同8時。定休日は水、木曜日。0943(75)2372。

 白壁の町並みが残る福岡県うきは市吉井町に「梅小路横丁」という小さな路地がある。その奥でひっそりと営業している「中華そば おさみ」。郊外の幹線道路沿いに同じようなチェーン店が並ぶ昨今、その対極をいくような店だが、県内外から多くの客が詰めかけている。

 「価格での勝負はしたくなかったんです」。店主の鹿田修さん(38)はこの地に店を構えた理由を説明する。ただ、ここにいたるまでには紆余(うよ)曲折があった。

 この世界に飛び込んだのは滋賀県での学生時代。アルバイト先として豚骨ラーメン店を選んだ。卒業後も働き、そのまま就職。「独立する気はなかった」と言うが、店長になるとその考えが変わった。

 「学生が多く、低価格が命。味を変えたくても経営者がだめと言う。ストレスがたまっていった」

 約10年働いた店を辞めると「料理のイロハを学びたい」と日本料理店で1年修業。31歳で福岡県那珂川町に「遊楽」を開いた。提供したのは豚骨ラーメン。手探りで改良を続けて納得できる味を確立しつつあったが、同時に悩みも抱え始めていた。

 近所は飲食店が飽和状態で、セールも多く、店頭に値段を張り出す店もあった。価格競争に巻き込まれていた。

 「味は譲れない。こだわるだけ材料費が上がる。価格勝負が嫌で独立したのに…」

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 転機のきっかけとなったのは店名にも掲げる「中華そば」の存在だった。

 遊楽の開店から3年ほどがたった頃、結婚を控えたイタリアンシェフの友人から「披露宴で出すので、手打ちパスタに合うスープを作ってくれないか」と頼まれた。最初は豚骨で作ったが全くだめ。そこでしょうゆ、鶏がらベースの中華そばに行き着いた。

 「豚骨のパンチより、しみじみおいしい感じが良かったのでしょう」。限定メニューとして店で提供すると評判も上々。「うまくいくかは分からないけれど、違う場所、違う看板でチャレンジしたい。だめだったらあきらめる」。そんな思いで古里に戻り、12年5月に再スタートを切った。

 その看板メニューを味わった。透明感あるスープは、昆布、カツオの和風だしに支えられつつ、鶏がら、しょうゆのまろやかな甘みがじんわりと舌を包む。麺はほどよい弾力があって、歯ごたえも心地よかった。

 地元に戻って4年。店も軌道に乗った。それでも「納得できる味を出すには自分の体調も重要」と営業時間は1日5時間に限っている。

 「吉井には価格で勝負する店がほとんどない。ようやく楽しむ余裕も出てきました」
 (小川祥平)


=2016/11/17付 西日本新聞朝刊=

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