小学校英語(3)国際化 多国籍が通う学校で

西日本新聞

 日本語、英語、韓国語、中国語。校内表示の多くは4カ国語で記されていた。

 福岡市東区の城浜小学校には、近くに九州大やモスク(イスラム教会)があることもあり、留学生の子弟ら外国籍の子どもたちも通う。現在も全校児童128人のうち、36人は12カ国の外国籍。国際都市・フクオカならではの現実がある。

 グローバル化に対応する人材育成に向け、英語教育の早期化へとひた走る日本。この学校ではどう捉えているのだろう。

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 周囲の団地では高齢化が進み、各学年1クラス。6年生22人のうち、5人は5カ国の外国籍だった。その一人、Aさんは9月、エジプトから転校してきた。温厚そうな男の子。父親はかつて広島大に留学。小学1年は日本で過ごしたが、その後は祖国で暮らし、当初は日本語が話せなかった。

 同校には日本語指導教員が4人いる。Aさんも国語や社会などの授業は、別教室で個人指導を受けることが多い。母語はアラビア語。分からない日本語は、隣席のリビア籍の男の子に聞く。だが、日本語学習の場はそこばかりではないようだった。

 担任の脇本雅史教諭(36)はまず、Aさんに「宿題」を出した。「クラスみんなの名前を覚えよう」。そして、帰りの会で「彼女は誰だっけ?」とクイズ形式で問い掛けた。Aさんは当初、言葉に詰まった。すると誰かが小声で助け舟を出した。

 「子ども同士の関わりって、すごい。教師のひとことより、もっと大きい。だから、彼も頑張って日本語を覚えようとする」(脇本教諭)

 Aさんの日本語はまだカタコトだが、みんなに連絡帳をてきぱきと配って回り、級友と肩を組んだりしていた。

 教室の黒板の上には、こんな英語が記されていた。〈One For All All For 0ne〉(一人はみんなのために、みんなは一人のために)

 言葉を学ぶには、そんな周囲のまなざしも必要なのだろう。

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 9日6時限目の外国語活動。外国語指導助手(ALT)の石崎和子さん(52)と脇本教諭が連携指導した。学習テーマは〈Whattime is it?〉(いま何時)。数字の読みを復習した後、石崎さんは時計の針を動かしながら、問い掛けた。

 Aさんは度々、手を挙げた。途中のグループ学習でも、彼は周囲の級友に教える側に回っていた。普段はあまり見られない彼の姿だった。

 留学経験がある石崎さんの授業は全て英語。子どもたちの表情を見計らい、脇本教諭が時折、日本語で「みんな、分かったかな」と割って入った。

 今の英語教育の流れを、石崎さんはどう捉えているのだろう。授業後、聞いてみた。

 「日本の英語教育って、あまり時間をかけず、効率的に教えようとする余り、逆に遠回りをしているんじゃないかな。テニスボールの打ち方は教えるけれど、実際に打つ練習をしない、みたいな」

 日本の英語教育は文法や和訳にこだわりすぎており、もっと「感覚的理解」「自己表現」「コミュニケーション」という入り口があっていい。そんな考えに立ち、授業の始めにはシェイクハンド、ハグ、ブリンク(まばたき)などを発音しながら、実際に体を動かす「英会話体操」でも盛り上がっていた。

 脇本教諭も大学時代、カナダに1年間、語学留学した経験がある。「物おじせず、未知の世界に飛び込んでいく。分からないことは、分からないと聞き、働きかけていく。小学校英語って、単なる言語学習ではなく、そんな心の壁を取り除いていく一歩なんじゃないかな」

 とはいえ、この学校には保護者から英語で電話がかかっていることも少なくなく、先生たちはつい身構えてしまうのだという。

 ◆福岡市の外国籍児童生徒 福岡市の市立小中学校で学ぶ外国籍の児童生徒数は4月末現在、796人。国籍は40カ国に及び、ここ数年、増加傾向にある。内訳は小学校569人、中学校221人、特別支援学校6人。外国籍の子どもたちの日本語指導に当たる拠点小学校(日本語サポートセンター)が市内には4校あり、城浜小もその一つ。近隣の小中学校に通学する子どもたちも各センターで日本語を学んでいる。

=2016/11/20付 西日本新聞朝刊(教育面)=

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