マグカップでホットワイン Xマスマーケットの定番「冬の風物詩に」

西日本新聞

 イルミネーションがきらめくJR博多駅前広場(福岡市博多区)に、ほんのり甘くてスパイシーな香りが広がる。山小屋風の特設店舗で、ドイツの女性たちが黄色いマグカップにルビー色の液体を注いでいる。寒空にホットワインの湯気が立ち上った。

 「寒くなると飲みたくなります。季節感もあるし」。休日に訪れた会社員、工藤あゆみさん(46)=福岡市東区=がカップを両手で包み込む。友人の谷本陽子さん(45)=福岡県春日市=は普段から自宅でも楽しんでいる。「今は市販されてるし、電子レンジでチンして飲んでます」

 今年4回目となったイベント「クリスマスマーケットin博多」。「ホットワインの匂いで『もう冬だね』と感じてもらえるような、福岡の風物詩にしたい」と実行委員長、佐伯岳大(たかひろ)さん(35)が言う。

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 クリスマスマーケットはドイツ発祥とされる伝統行事。キリストの生誕を祝う準備のためクリスマス前の4週間、各地の広場や通りで開かれる催しで、人々は雑貨などを買い求め、食事を楽しむ。欠かせないのがマグカップに入ったホットワインだ。本場ではグリューワインと呼ばれることが多い。

 温めたワインにオレンジなどの果物の皮、蜂蜜や砂糖、シナモンのほかショウガや八角などを入れる。こうしたスパイスが冷えを予防し、体を温めるのだという。欧州では冬にスキー場やイベント会場などで売られ、家庭でもよく飲まれている。

 「日本でいえば卵酒。薬草酒のようなイメージです。風邪をひきそうな予感がしたとき、これを飲んで休めば翌朝はキリッと目覚めます」。そう話すのは、ドイツの知人宅で味わって以来のファンという福岡市の料理研究家・フードディレクターの浜地佳世子さん(57)。

 浜地流の作り方のポイントは沸騰させないこと。沸騰させるとワインの風味がなくなり、スパイスや果皮から苦味が出てしまう。ワインは例えば飲み残したボージョレ・ヌーボーなどでも大丈夫という。

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 ただイベントに出すホットワインとなると話は別だ。どのワインをどんなスパイスと組み合わせるのか。試作を重ねた佐伯さんは「今の味は最高という自信がある」と語る。

 佐伯さんの本業は事務用品代理店の経営。イベントとは無縁だったが、福岡を盛り上げたいといつも考えていた。何かのヒントになればと9年前に訪れたドイツで、クリスマスマーケットに出合った。

 その後、知り合いもできたドイツでは、訪れる度に「地元の物だから」と、夏はビール、冬はマグカップを土産にもらった。贈り主の地元に対する思いが詰まっている気がした。

 伝統行事を通じて人々がつながり、地元への誇りを育む。そこにホットワインがある。そんな温かなクリスマスの光景を福岡でも定番にしたい、と強く思うようになった。

 イベントは昨年から福岡市・天神でも始まり、12月25日までの期間中、両会場で計300万人(実行委)が集まった。大分市、鹿児島市でも同様の催しが師走の街を彩る。

 福岡の2会場で出されるホットワインはマグカップ付きで1杯千円。赤ワインに蜂蜜とシナモン、ナツメグなどを加えている。カップに描かれたライラックの花言葉は「誇り」。深まる寒さの中で、心温まるほろ酔いを味わいたい。

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 浜地佳世子さんのホットワインレシピ【材料2杯分】赤ワイン2カップ(400ミリリットル)/シナモンスティック1本/クローブ(粒)3個/カルダモン(粒)1個/オレンジ1/2個(スライス)/レモン1/4個(同)/好みで蜂蜜

【作り方】鍋で作る場合、材料をすべて入れて中火にかける。沸騰させないように約5分煮る▽電子レンジで作る場合、1カップ(200ミリリットル)のワインと材料の半量をカップに入れ、ラップをせずに電子レンジ(600ワット)で2分加熱する。


=2016/11/23付 西日本新聞朝刊=

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