RUN伴(ランとも) 認知症の人と行く 列島縦断リレー 地域で支える土壌が耕された

西日本新聞

 認知症であっても、なくても安心して暮らせるまちづくりを-。そんな願いが詰まったたすきが今、九州を駆け抜けている。認知症の人や家族、介護職、地域住民などが一緒に走ってたすきをつなぐイベント「RUN伴(ランとも)」が、北海道から南下し3日、九州に“上陸”。19日の鹿児島県枕崎市まで、九州7県を踏破する。

 RUN伴は「NPO法人認知症フレンドシップクラブ」(東京)が認知症への理解を深めようと、2011年から毎年開催。北海道を起点に、ゴールは東京、大阪、広島と年々距離を延ばしてきた。5回目の昨年は福岡県大牟田市がゴールで、初めて九州までたすきがつながり、全国で7775人(当事者655人)が参加した。

 今年は26日、那覇市で全国のゴールを迎え、初めて日本列島縦断が実現する予定。総距離約6500キロ。認知症の人が参加できない区間は、支援者たちが車などでたすきを運んでいる。参加者は全国で約1万3千人、九州では約3500人に上るという。各地の福祉関係者が実行委員会をつくり、ボランティアで運営している。

 「普段2人だけで過ごしていると、母のこんな笑顔は見られない」。福岡市の自宅で要介護4の母、沼田フミ子さん(90)を介護している主婦安藤房子さん(65)は満面の笑みだった。

 秋晴れの5日、フミ子さんが利用する同市城南区東油山の小規模多機能施設めおといわ・ゆいを車椅子で出発。近くの堤公民館まで約400メートルを、約50人がオレンジ色のTシャツを着て助け合いながら歩いた。

 認知症のフミ子さんは夜2~3時間おきにトイレに起きる。安藤さんは家事などに追われ、気が休まる時間も、母と同じ目線でゆっくり過ごす時間も少ない。それが、この日は車椅子を押して一緒にゴールを目指し、地域の人に大きな拍手で迎えられた。「ゴールできてうれしかった。最後まで頑張ったなあ」と繰り返すフミ子さんも、ずっと笑顔だった。

 ゴールで迎えた堤地区自治協議会長の山口繁実さん(82)は「認知症をよく理解して、みんなで支え合える地域をつくりたい」と話した。

 今年初めてコースに加わった福岡県柳川市では6日、約230人が参加。柳川名物の川下りでたすきをつなぐ場面もあった。

 介護職有志が始めた実行委員会は小学校校長、高校教諭、郵便局員など多職種の30人までに広がった。「うちも親戚に認知症の人がいる」「窓口に認知症の人がよく来るから、理解を深めたい」など、協力の輪が自然に広がったという。

 中心になった介護付き有料老人ホーム施設長の平田稲子さん(52)は「まだ家族が認知症になったことを隠す人もいる。隠せば家族も追い詰められる。そんな世の中、地域を変えていきたい。RUN伴で人と人がつながり、地域で支える土壌が耕された」と手応えを感じている。

 介護職有志が楽しんでイベントを運営する姿を見て「介護職のイメージが変わった」と驚く高校生の参加者もいた。暗い、きついという介護職のイメージを塗り替える副産物もあったようだ。

 一緒に走る、歩くだけの簡単なイベントではあるが、同じ目線で行動することで、認知症の人にも周囲にもはじけるような笑顔が生まれる。認知症になっても住みやすい地域づくりのヒントがたっぷりあった。

 九州ブロック代表の大牟田市職員池田武俊さん(56)は「介護職だけでなく、地域住民や企業などにも輪が広がり、その地域らしい取り組みが生まれている。これからの地域づくりのきっかけになる」。たすきと一緒に地域の絆もつないでいる。

 ◇RUN伴は来年以降も実施予定。九州ブロック実行委員会=0944(85)8851▽メール=runtomo_since2015@yahoo.co.jp


=2016/11/17付 西日本新聞朝刊=

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