少子化対策 遅れた理由 【第16部】誰もが輝く国へ ノルウェー・リポート<3>

西日本新聞

 女性議員を増やす「クオータ制」を日本にも導入しよう-。こうした議論では必ず、男女を問わず異論が出る。選挙の候補者数や議席の一定比率を女性に割り振る制度ゆえに「女性だけに『げた』を履かせるのはおかしい」と言うのだ。

 「いいえ。げたを履いているのは男性の方です」。上智大の三浦まり教授(政治学)は反論する。「日本では家事や子育ての家庭責任を免責されている男性が多く、仕事に専念できる。これって、げたでしょう?」

 三浦さんによると、クオータ制は約120カ国が導入している。議会の国際組織「列国議会同盟」(本部ジュネーブ)が昨年発表した調査では、日本の女性議員比率(衆議院9・5%)は193カ国中157位で、制度がある韓国はもちろん、中国、北朝鮮と比べても低かった。

 昨年末の臨時国会では、カジノを合法化する法律がスピード成立する陰で、女性議員を増やすための「政治分野の男女共同参画推進法案」は採決に至らず、先送りされている。

    □    □

 そもそも、女性議員が少ないことで実害はあるのだろうか。

 三浦さんは少子化や人口減少を挙げる。「保育は女性がタダでするものという意識のせいで政策上の優先順位が下がり、保育所不足や長時間労働などの対策が遅れてしまっています」

 少子化問題が注目され始めたのは平成に入ったころ。1人の女性が生涯に産む子どもの推定人数を示す合計特殊出生率は2005年には1・26まで落ちた。15年に1・45へ回復したが、16年に生まれた子どもは過去最少の推計98万人で、初めて100万人を割り込んでいる。

 「保育園落ちた日本死ね」。子どもが保育所に入れず、国に怒りをぶつける匿名ブログが昨年反響を呼んだときも、安倍晋三首相は国会答弁で当初「匿名である以上、それが本当かどうか」と問題にしなかった。

 子育て環境の問題は、実際に育児に関わる時間が長い女性が気付きやすい。男性が圧倒的に多い国会は、どうしても感度に乏しくなる。「女性が意思決定に入らないと政策がゆがむのです」と三浦さんは言う。

    □    □

 ノルウェーでも1970年代は保育所が足りず、就学前の子どもの数%しか通っていなかった。保育所の整備は、女性の政治分野への進出と歩調を合わせるかのように、男性の育休の整備とセットで進んだ。

 出生率は83年の1・66から90年の1・93に上がり、その後1・8前後で推移している。育児施策担当者は「政府はこの10年、男女とも経済的基盤を持ち、働きながら子どもを持てるシステムをつくってきた」。結果、3~5歳の96%超が保育所に通うようになった。

 こうした環境の下で育つ若い世代は今の社会をどう見ているのだろう。首都オスロの国会を訪ねると、与党、保守党の青年部で高校時代から活動している女性2人が迎えてくれた。

 医大入学を控えるコルストランドさん(19)は「私たちの世代は男女同様に扱われている。でも社会に出ると(指導的地位の)女性が少ないですね」と語った。地方議員のグンヌフセンさん(20)は「28~40歳ごろの女性は子どもとの時間を優先し、まだ政治に積極的ではないのです」と説明する。背景には「女性は家庭」という価値観の名残に加え、地方議員の多くは無給で兼業が一般的なため、子育てが忙しい時期の議員活動は負担が大きいという事情がある。

 法や制度の上では、男女平等はほぼ実現している。コルストランドさんは「今後はクオータ制を使うのでなく、女性の意識や実力をさらに高めていくことが大事です」と語る。ノルウェーはもう、男女どちらも「げた」を履かない、次の段階を見据えている。


=2017/01/07付 西日本新聞朝刊=

PR

くらし アクセスランキング

PR

注目のテーマ