やながわ有明海水族館(福岡県柳川市) 生き物好きが集まる拠点に

西日本新聞

 有明海の珍しい生き物や国内で絶滅が心配される淡水魚などを集めた「やながわ有明海水族館」が福岡県柳川市にあります。館長は「九州のさかなクン」と言われるほど魚にくわしい小宮春平さん(18)。こども記者5人が取材しました。

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 ■絶滅危惧種も16種

 水族館に入ると目の前の水槽を、空気呼吸をする「古代魚」と呼ばれる魚たちが泳いでいた。アロワナやアリゲーターガーなどだ。「柳川のクリーク(水路)にいる身近な魚から、外国の古代魚まで約90種が幅広く展示され、いい水族館だ」と、魚が大好きな来島知希記者も満足した。

 水族館は学生ら6人でつくる環境団体「有明海塾」が運営している。「(メンバーが)福岡県内だけでなく日本各地へ行って魚を探しているそうだ」(小宮衣織記者)。昨年10月のリニューアルオープンから1カ月半で20種類も増えた、と小宮館長はうれしそうだ。

 中には「カゼトゲタナゴ=イラスト参照=など絶滅危惧種が16種類いるという」(上村晄大(こうた)記者)。絶滅危惧種になる最大の要因は工事などの開発行為だと教えてもらった。

 ■メダカの放流はだめ

 館内には個性的な生態の魚がたくさんいる。

 卵がふ化するまで大事に育てる別の魚の巣へ、自分の卵を勝手に産みつけ、子育てを押しつけることを「托卵」と呼ぶ。

 ムギツクという魚は複数の種類の魚に托卵するが、その中でギギという魚はわざと托卵させる。ムギツクより早くふ化したギギの稚魚がムギツクの卵をえさにするそうだ。「ムギツクの托卵する性質を利用する魚がいると知ってびっくりした」(来島記者)

 日本のメダカは2012年から、キタノメダカとミナミメダカに分けられた。この水族館の近くにいるのはミナミメダカの有明型。ペットショップで売っているのは本州中部のメダカを品種改良したものという。「飼っていたメダカを川に逃がしたら『外来種』になってしまい、(交配により)元の種類のメダカが減ってしまう」(入江環記者)ので、やってはいけない。

 ■ピンセットで作業も

 この水族館ではえさを買って、その場でやれる。えさをまきながら、体の大きい魚が小さい魚を押しのけて食べるのに目がとまった浦川蓮記者は「少しずるいなぁと思ったけど、これも生き延びるための大切な手段なんだと思った」。

 小宮館長たちはどんな苦労をしているのか、聞いてみた。大水槽でイカリムシという寄生虫が発生し、「魚に付着した寄生虫を一匹一匹、ピンセットで取るのが大変だったそうだ」(浦川記者)。

 逆に、うれしいことは「いつも小学生が魚を持って来てくれることだという」(入江記者)。また、「生き物好きの人がたくさん来てつながりを持て、環境を良くするための拠点になっていくことがうれしいそうだ」(小宮記者)。

 上村記者は、取材を終えて「有明海が元の美しさを取り戻し、生き物が絶滅しなくなることを願った」。

 ●館長は18歳“九州のさかなクン” 小宮春平さん 魚への熱い思い こども記者に伝わる

 水族館に魚やカニなどが約90種もいれば、えさや生態など膨大な知識が必要になる。18歳の小宮春平さんにとって、館長の重責を支えるのは、魚へのひたむきな情熱と、生き物への関心が薄い子どもたちへの危機感だ。

 幼少期から図鑑が大好きで、小学3年から自宅そばの筑後川で釣りを始めた小宮さん。高校時代は興味のある魚を求めて、中国やアフリカなどへ1人で釣りに行ったほどの行動力の持ち主だ。一方で、ブラックバスなど外来種が川の生態系に与える影響をまとめたり、九州大の有明海干潟調査に参加したりした。

 しかし、ザリガニを触れない小学生や釣り経験ゼロの子どもたちの多さにショックを受け、「生き物に興味がない人にも興味を持ってもらって、環境問題を考えてもらいたい、と考えるようになったそうだ」(入江記者)。そんな時、昨年6月に休館した「おきのはた水族館」を引き継がないかという話がきて、小宮さんは「生き物の大切さを伝える場として運営をやらせてもらうと決めた」。

 「いろいろな魚について目を輝かせて話す小宮館長に、魚に対する『愛』を感じた」(浦川記者)など、小宮さんの情熱はこども記者たちに伝わったようだ。

 小宮さんは魚類学者でタレントの「さかなクン」を「目標ですね」と言う。当面、2年間は水族館に携わりながら、有明海で絶滅が危ぶまれているオオシャミセンガイの研究を形にしたいと意気込んでいる。

 ●わキャッタ!メモ

 ▼やながわ有明海水族館 福岡県柳川市稲荷町にある民営水族館。環境が悪化している有明海に関心を持ってもらおうと、前館長が2010年に開設した「おきのはた水族館」を、学生らでつくる環境団体「有明海塾」が引き継ぎ、16年10月にリニューアルオープン。水槽は約30個。入場料200円(高校生以下無料)。開館は平日が正午~午後4時半、土日祝日が午前10時~午後5時。火曜休館。

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=2017/01/11付 西日本新聞朝刊=

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