陥没1週間突貫復旧 博多駅前15日早朝通行再開 「固まりやすい土」威力

西日本新聞

 福岡市営地下鉄七隈線延伸工事によるJR博多駅(福岡市博多区)前の市道が大きく陥没した事故から15日で1週間を迎える。市が埋め戻しに注力した結果、同日早朝には全面復旧の見込みで、焦点は原因究明に移る。地下水が多い地層もある地中の地下鉄工事で、工法の選択や運用、管理などに問題があったのか。

 「二次被害も出さずに来られた」。14日の現場での専門家会議で、高島宗一郎市長は埋め戻しが順調に進んだことに胸を張った。

 深さ約15メートル、縦横約30メートルの巨大な穴の埋め戻しが早期に完了見込みとなったのは、土にセメントや固化剤を混ぜた流動化処理土を使ったのが大きい。

 しかし、この特殊な土は、固まりやすいために備蓄はできない。市によると、福岡市の近郊にある生産工場を押さえ、確保のめどが付いたことが功を奏した。工場で増産を続けながら、ミキサー車で現場までピストン輸送。その量はミキサー車1550台分の約6200立方メートルにも及んだ。

 流動化処理土の使用で、埋め戻す前に比べて地盤が30倍の強度となった一方、コンクリートのように強固ではないため、今後は陥没事故の原因調査のためのボーリング調査ができる利点もあるという。

 現場付近の延伸工事は、先に小さな穴を通し、必要な大きさまで広げてコンクリートを吹き付け、ロックボルトで固定する「ナトム工法」で進められていた。大型ドリルで掘り進むのと同時に壁面を補強する「シールド工法」と比べ、トンネルの大きさを変えることができるメリットがある。

 ただナトムは、補強までに一定の時間がかかるため、地下水が多い地層では水が噴き出し、補強が難しい場合もある。今回の事故は、補強までの間に起きたとみられる。

 ナトムでは、事前の地質調査が重要だが、市は「固い地盤なので採用した」。また市は、工事開始後に、固い岩盤層の幅が波打っていたことを見つけ、岩盤の厚さを2メートル以上確保するように、8月に現場周辺の設計を一部変更していた。

 施工業者の大成建設は、地盤の変化を感知する最先端の技術も導入していたという。工事はこうした判断の積み重ねで進められていたが、どこかの段階で問題があった可能性がある。

 周辺の地層の複雑さも明らかになってきた。九州地質調査業協会が1981年に作製した福岡地盤図によると、現場の地層は岩盤層が急激に落ち込んでいる。

 後藤恵之輔長崎大名誉教授(地盤工学)は「ロックボルトが岩盤層を突き抜け、事故につながった可能性もある。別の工法にすべきだった」と指摘。

 一方、佐藤研一福岡大教授(同)は「工法の選択は適切。工事中の地下水の処理が大きな課題で、今回も慎重にやっていたと思う」と話し、専門家の見方も分かれる。

 大成建設などによると、延伸工事中のトンネルには事故現場から約100メートルにわたり、陥没した土砂が入り込み、博多駅側には水が充満しているとみられる。工事再開には除去作業から始める必要がある。

 延伸部分の開業は2020年度が目標。21年に福岡市である世界水泳選手権を見据えた設定だが、「ただでさえかなりタイトなスケジュール」(市幹部)。

 他の2工区でのシールド工法による掘削も18年度に始める予定だったが、市は原因究明前の今回の区間の掘削工事再開はないとしており、「始まりも終わりも、何も見えていない」(市交通局)状態だ。

この記事は2016年11月15日付で、内容は当時のものです。

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