共生社会の実現を 相模原事件半年 九州の関係者に聞く

 相模原市の知的障害者施設で19人が刺殺され、27人が負傷した事件から26日で半年たった。再発防止に向けた国の報告書がまとまるなど検証は進むが、事件の衝撃は今も生々しい。九州の福祉関係者にあらためて事件を振り返ってもらった。

 ●生き方の尊重で障害者理解進む

 ▼知的障害者と家族でつくる「福岡市手をつなぐ育成会保護者会」 下山いわ子会長(55)

 犠牲者やその家族を思うと、半年たっても涙が出てきます。心の傷は癒えるはずがありません。

 事件は、さまざまな悲しい現実をあぶり出しました。容疑者の「障害者なんていなくなってしまえ」という主張と、それに同調する人が世代を問わずいたこと。被害者が名前を公表できなかったことも、理由の一つが「障害者だと知られたくないから」であれば、とても悲しいことです。

 事件の捜査が進み、再発防止に向けた国レベルの報告書もまとまりました。それでも、事件が二度と起こらないという安心はできません。本当に必要なことは、一人一人の生き方を尊重する共生社会を実現し、どんな命も尊く、かけがえのない存在だと、頭でなく心で理解することだと思います。そのために、幼い頃から障害者も一緒に育ち合うインクルーシブ(共生)教育が必要です。

 悲しい事件でしたが、社会を変えるきっかけにしないといけない。私たちも諦めず、障害者への理解と共生社会の実現を訴え続けていきます。

 ●開かれた環境と住民の見守りを

 ▼知的障害者施設でつくる「福岡県知的障害者福祉協会」 木高徳典会長(50)

 事件は、障害者施設の管理者にも大きな衝撃でした。私たちの協会は、福岡県内の知的障害者施設240事業所で組織。事件の背景を知りたいと、現場を訪れた会員もいました。同じ知的障害者の入所施設で起こったこと、元職員による凶行だったことなど、私自身も多くを考えさせられました。

 真っ先に、利用者の安全をどう確保するかを考えました。難しい問題ですが、社会と隔離する方向に向かうべきではありません。

 私が施設長を務める施設には門も塀もなく、近所の顔見知りの方々が自由に出入りしており、事件後もそれは変わっていません。施設が地域に開かれていることで、障害者への理解が深まるとともに、地域住民などたくさんの目での見守りが可能となり、不審者が入り込めない環境ができるはずです。

 その上で、地元の警察や行政、同じ障害者施設同士の連携を深めています。ささいな危険のシグナルも見逃さない態勢を構築することが、事件の再発防止につながると思います。

 ●地域で暮らせるサポートの強化

 ▼精神障害者の家族と事業所でつくる「福岡県精神障害者福祉会連合会」 一木猛会長(72)

 容疑者に措置入院歴があったと報道され、厚生労働省有識者検討チームの再発防止策を提言する報告書に、措置入院後の継続支援や見守り強化が盛り込まれました。

 精神障害者の家族でつくる全国精神保健福祉会連合会は事件直後、「事件が精神障害者全体の差別や偏見、誤った認識につながることを危惧(きぐ)します」というメッセージを発信しました。私の周囲には今も、差別を助長するのではと、不安に思う当事者は少なくありません。

 精神障害者の退院後の支援は薄く、サポートが手厚くなるのはいい。しかし、事件の再発防止策としての措置入院制度見直しでは、効果は得られないのではないでしょうか。退院後の支援を担う自治体がサポート態勢を取れないとの理由で、なかなか退院できない人が出てくるのでは、とも懸念します。精神障害者が地域で暮らしにくい環境につながるのは本末転倒です。

 昨年4月に施行された障害者差別解消法の理念が浸透することが、真の再発防止策のはずです。


=2017/01/26付 西日本新聞朝刊=

PR

くらし アクセスランキング

PR