睡眠、病気予防にも重要 福岡市で公開講座

西日本新聞

 「睡眠はインフルエンザの発症予防にもつながる」「受験生は試験開始の3時間前に起床を」-。福岡県医師会と西日本新聞社が21日に開いた公開講座は、時節の対処法を交えながら、睡眠の重要性を改めて紹介した。睡眠の時間と質の大切さ、睡眠不足の弊害…。睡眠研究の第一人者で、久留米大副学長・医学部長の内村直尚神経精神医学講座教授が特別講演したほか、その後のシンポジウムは「ぐっすり睡眠で健やかライフ」と銘打って快眠の道筋を追求した。会場となったイムズホール(福岡市中央区天神1丁目)には約450人が訪れ、健康に欠かせない睡眠の重みを共有した。

 ■特別講演

 ●久留米大医学部 内村直尚教授 免疫力高めストレス緩和

 眠たくなる時刻は決まっている。午前2~4時で、この間に深い睡眠が現れる。例えば6時間寝た場合、午後10時~午前4時が睡眠のゴールデンタイム。午前2~8時では深い睡眠は2時間程度で、同じ睡眠時間でも質が変わってくる。

 睡眠の役割は体と脳を休めること。起きている間にたまった老廃物を排出し、エネルギーを蓄える。子どもはエネルギー消費量が多く、お年寄りは少ない。必要な睡眠時間は年齢で異なり、8時間眠れるのは15歳まで。人間は朝起きてから16時間後に眠たくなる。だから、日曜の昼近くまで寝ていた子どもに親が「あしたから学校だから早く寝なさい」というのは酷だ。眠れるわけがない。早く寝せるには早く起こすこと。「早寝早起き」ではなく「早起き早寝」を心掛けてほしい。一方、65歳を超えると6時間ほどで良く、それ以上なら病気が隠れていることもある。

 睡眠は免疫力を高める。インフルエンザが流行しているが、手洗いやうがいは感染予防策。発症しないために効果的なのが睡眠だ。発症の有無は免疫力で決まる。高血圧、糖尿病、心筋梗塞、脳血管障害…。病気の予防にも睡眠は大切。記憶の固定という役割もあり、睡眠不足はアルツハイマーの原因にもなっている。

 現代はストレス社会。唯一ストレスを受けないのが睡眠中。このため、眠れなくなることは、ストレスから逃れられる時間が短くなるということ。うつ病のほとんどに睡眠障害がある。不眠のうち「何回も目が覚める」「朝早く目が覚める」は加齢で起こることもあるが、うつ病の発症と関係しているのは「寝付きが悪い」。身近に眠れなくなった方がいたら、うつ病に注意してほしい。

 ちょうど受験シーズン。100パーセントの実力を発揮するには試験開始の3時間前には起きてほしい。脳が働くのは起床から3時間後。できれば1カ月前、最低でも2週間前から実践を。国家試験を目指す学生には「3時間前起床」を半年前から指導している。これで成績がよい学生が合格できないという番狂わせはなくなった。不合格は実力通り…。

 睡眠の時間や質の低下、生体リズムの乱れは思考力や集中力を低下させ、体や心の健康も損なう。睡眠の重要性を考えて、健康寿命を伸ばしてほしい。

 ■シンポジウム

 ●眠るための飲酒 避けて 仮眠は短時間で

 田川大介・西日本新聞社会部長 内村先生の講演を聞いていただいた。睡
眠に関して考えることは。

 原田弘恵・福岡県医師会医療モニター 私は48歳。更年期障害と睡眠との関係が気になっている。

 内村直尚教授 女性ホルモンと睡眠は密接に関わっている。生理前は睡眠が十分にとれなくなり、生理中は過眠になるケースが多い。分泌量が減る更年期に出る症状は寝付きが悪くなったり、熟睡感が得られなくなったりする睡眠障害。女性ホルモンを補充したら改善するが、朝一定の時刻に起きてきちんと朝食を取り、運動するのが大事。

 城戸昌志・福岡県医師会医療モニター いびきが大きく、睡眠時無呼吸症候群(SAS)と診断され、現在治療している。

 内村 SASは気道が狭まるため、最初に出るのがいびき。気道が完全に閉じると無呼吸に。下顎が小さくて後退している人、肥満の人に起こりやすい。太ると舌にも脂肪が付き「霜降りの牛タン」のようになって気道をふさぐ。しかも加齢とともにあごの筋肉が衰え、口を開けて寝るようになり、それだけで気道が半分になる。1時間に10秒以上の無呼吸が5回以上ある場合にはSASと診断し、治療の対象は15回以上。昼間の我慢できない眠気や口の中が乾いているのが自覚症状だ。

 田川 睡眠に悩んだ場合の受診先は。

 瀬戸裕司・福岡県医師会専務理事 睡眠障害の原因はさまざまで、症状も異なる。いろんなことを実践して治らないのであれば、精神科などの専門医に診てもらうのが大切だ。日本は睡眠薬が使いにくい国。「脳が溶ける」「認知症になる」と突拍子のない話が出てくる。苦しんでいる患者が薬を飲まなくなり、ますます苦しむ。

 田川 会場からの質問で「アルコールを飲んだ後に睡眠薬は」。

 内村 アルコールと睡眠薬を一緒に飲むと、入眠は強まるが、副作用が起こりやすい。記憶がないのに冷蔵庫の中のものを食べる奇異反応もある。3時間は間隔を空けてほしい。アルコールですとんと寝てしまうことがあるが、必ず目が覚める。酒で寝る習慣を付けると、量が増えて依存症になっていく。眠る目的の酒は避けた方が良い。

 城戸 若いころ深夜勤務、当直勤務の経験がある。対応策は。

 内村 大事なのは夜勤(当直)翌日の夜の睡眠をきちんと取ること。一晩の睡眠不足は次の日に普通に寝ると、睡眠の質が高まって睡眠不足が解消される。ただ昼間に寝過ぎると、夜眠れなくなるため、仮眠は短時間で。夜勤が続く場合には明け方の帰宅時に濃いめのサングラスをしたり、部屋を暗くしたりすると寝付きやすい。眠れないときには睡眠薬を使ってでも寝た方が夜の仕事が効率的になり、安全性も高まる。

 田川 会場からは夜間の頻尿の質問も。

 内村 夜にトイレに行くのは、睡眠が浅くなって膀胱(ぼうこう)が小さくなるから。若い人は睡眠が深いから行かない。年を取って睡眠が深まるのは最初の3時間。寝る前の水分の取り過ぎを控える必要はあるが、3時間後のトイレは問題なし。逆に3時間以内なら前立腺肥大や過活動膀胱の疑いもある。


=2017/01/28付 西日本新聞朝刊=

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