転倒から身を守ろう 体操で筋力アップ

西日本新聞

 転倒・転落で亡くなる人は交通事故の死者より多い、と知り驚いた。厚生労働省の人口動態統計(2015年)によると7992人で、交通事故による死亡者数5646人より2千人以上多い。あなどれない転倒をどう防げばいいか、取材した。

 ●よく通る道でも

 「自分が転ぶなんて思ってもいなかった。打ち所が悪かったら大変なことになっていたかも」。福岡県宗像市の会社員女性(41)は昨年10月、玄関先の階段を下りているとき、足が滑って左膝から落ちた。雨の夜で、両手には花束を抱えていた。膝を骨折し、全治1カ月。しばらく松葉づえを使う生活を余儀なくされた。転倒以降、靴底に滑り止めを貼り、階段では手すりを持つなど予防を徹底している。

 この例では階段だったが、転倒・転落による死亡者のうち、約7割は段差のない場所でつまずいたりよろめいたりしている。新田原聖母病院(福岡県行橋市)の理学療法士で、民間団体が認定する「転倒予防指導士」の資格を持つ浜村浩崇さん(39)は「よく通る道や毎日やっている動作の中で転倒事故は起こっている」と説明する。

 布団の上げ下ろしでバランスを崩したり、駐車場の車止めにつまずいたりする例が目立つという。特に高齢者は筋力が低下し、バランス感覚が衰えるのでリスクが高い。転倒・転落による死亡者も9割近くは65歳以上だ。骨折が寝たきりにつながる恐れもある。

 ●踏ん張りパワー

 予防には筋力アップが効果的という。浜村さんに体操を教わった=図、写真参照。足の指を動きやすくしたり、下半身の筋肉を鍛えたりすることで、転倒しそうになったとき踏ん張る力につながる。

 スクワットは、後ろに椅子があるようなつもりで、ゆっくりと膝を曲げ伸ばしする。足の指はつりやすいので、手でしっかりほぐしてから取り組もう。浜村さんは「10回前後を目安に、痛みがあったら無理しないで」とアドバイスする。

 ●「薄暗い」要注意

 「室内の環境を整えることで自宅での転倒リスクを減らせますよ」と助言するのは、福岡医健専門学校(福岡市博多区)の作業療法科・学科長の河口青児さん(48)。冬は電気ストーブやこたつのコードに引っ掛かったり、ホットカーペットの角がめくれてつまずいたりする恐れがある。コード類は束ねて、動線には物を置かないようにする。

 薄暗い状態も要注意だ。トイレまでわずかな距離だからといって、暗いまま廊下を歩くと転ぶ恐れがある。少しの移動でも、こまめに電気をつけよう。

 河口さんが高齢者に対し転倒予防について話すと、「自分は大丈夫」という反応が返ってくることが多いという。河口さんは全身が映る鏡の前で歩いてみることを勧める。若い頃のように歩けていると思っても、実際は足は持ち上がっておらず、ちょっとした段差でもつまずく「すり足」のような歩き方になっていることもある。河口さんは「転びやすいという自覚を持ち、油断しないことが何より大事」と強調する。


=2017/02/07付 西日本新聞朝刊=

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