【日日是好日】お寺で柏手? 違いますよ 羅漢寺次期住職 太田英華

西日本新聞

 毎朝三門を開けると一瞬でその日の景色が目に入ります。雨の日、雪の日、晴れた日。どこからか風が雨を強め、冷気を漂わせ、また春の匂いを連れてくる。

 穏やかな気持ちで、全身で感じる今日。「おはようございます」。ふと誰かが見ている。三門横の梅の古木に1羽のヒヨドリが。最近毎朝あう彼はここが気に入った様子。1羽のキツツキが「こんこん」と木を突く、いずこからかもう1羽が「こんこん」と突く。まるでこだましているような会話。桜の芽が膨らみ始めると、古木に小鳥たちが集まり、何やら楽しそうにピーチク、パーチク。愉快です。

 寒さから解放された生き物たちが次第に活動し始める季節。生命の息吹を感じます。風の匂いはもう春です。

 最近参拝者の少々気になる行動が。お参りに来られ、本堂前や無漏窟(むろうくつ)前に到着。おさい銭箱に「チャリン」、その後「パンパン」。あれ?

 柏手(かしわで)。若い方だけではなく年配の方も。中には家族連れのお父さんが参拝のやり方を丁寧に教えている。かしこまって、「パンパン」。姿勢を正して礼。またその後「パンパン」。

 なぜ? お参りする姿勢は間違っていないのだけれども、ここはお寺。せっかくですがお父さんの間違いは正さなければ。「今、柏手を打ったでしょ? それは神社でのお参りの仕方。お寺ではただ合掌して礼拝するだけですよ」。大体の皆様が仏様と神様の違いが分からない様子。神聖な場所には変わりはないのですが…。

 ある日の事。男性若人10人の参拝者。三門をくぐるなり、「うわあ」とおのおのが感動。本堂前でも何だか感動している。せっかく来たのだからと、本堂二階阿弥陀堂へ行きそのまま庭園でゆっくり。最後に本堂前に勢ぞろい。10人が1列に並び、そして皆で「パンパン」。やっぱり、柏手。1人の男の子が顔を上げても、ほかの9人はまだ熱心にお参り、その子も慌ててまたお参りし直す。一生懸命お参りする姿に、何だか注意するのをためらうほど。

 しかし、若人のこれからを考えると…。「皆さんいくつ?」「18と19です」「この中でお家にお仏壇がある人は?」と尋ねると4人が挙手。「君たちはお仏壇の前で柏手を打ってお参りする? しないでしょ? ここもお仏壇と同じ仏様がいらっしゃるから柏手を打たないんだよ」と言うと、若人たちは全員照れ笑いをし、すがすがしく「はい」と答えてくれました。

 「お任せします。お釈迦(しゃか)様」の「南無釈迦牟尼仏(なむしゃかむにぶつ)」は曹洞宗のお唱えの仕方。少々お唱えしづらいので「ありがとさん」と言いましょうとおっしゃった老師がおられました。静かに手を合わせ、目を閉じ深呼吸。心の中で「ありがとさん」。「パンパン」と柏手を打ってしまうと、いずこからか私が現れますので、ご注意を。

 【略歴】1967年、羅漢寺27代住職の娘として生まれる。高校卒業後、大学進学のため上京。20代半ばから40歳で出家するまでフラメンコダンサーとして活動。出家後、愛知県の尼僧専門修行道場で約5年間、僧堂修行し、2013年3月に帰山。現在羅漢寺28代次期住職として寺を守る。


=2017/02/26付 西日本新聞朝刊=

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