カトマンズ(ネパール) 聖と俗が隣り合わせ

西日本新聞

 ネパールの首都カトマンズを訪れた12月は乾期。舞い上がった砂ぼこりが街全体を覆っていた。土産物店や飲食店が並ぶ最大の繁華街タメルはほとんど舗装されていない。店頭の商品も、看板も、空気も、寝そべっている犬も黄ばみ、はなをかむと黒い鼻水が出た。

 人気の観光地ダルバール広場に「リキシャ」で向かった。自転車の後ろに人力車の座席がくっついた年代物だ。200ルピー(約200円)也。時々鳴らすクラクションは、ペットボトルにラッパを装着した代物。音は「パフ、パフ」と頼りないが、運転手の腕は確か。岩が露出したでこぼこ道でもバランスは崩さない。

 リキシャで10分。13世紀に王宮が置かれて以来、国の中心として栄えたダルバール広場は、丸ごと博物館だ。古い寺院が集まり、石造りの神像や仏塔が点在する。中でもヒンズー教の破壊神シヴァの化身「カーラ・バイラブ」の像の周囲は礼拝者が絶えない。大胆な色彩とデザインに目を奪われる。

 まるで聖地、かと思いきや露天商たちは世俗的。小さな仏像を眺めていると「3千ルピーでどうだ」と価格交渉が始まる。半額までは割と簡単に下がるが、その先は粘りが必要だ。ミルクと香辛料、砂糖たっぷりの紅茶「ネパリティー」の売り子が「100ルピーよ」と寄ってくる。交渉の末、1杯20ルピーでありついた。滞在中はこんな価格交渉の連続だ。

 にぎやかな広場を離れ、路地から路地へ。通行人でごった返す中に、タクシーやバイクがクラクションを鳴らして容赦なく突っ込んでくる。衣服を広げた商人の甲高い売り声、拡声器で何かを訴える集会、幼い物乞いが差し出した小さな手のひら…。目が回る。

 騒々しい街中を離れ、西へ徒歩30分。小高い丘の頂上に白い仏塔が見えてくる。スワヤンブナートだ。頂上に続く急な石段は約400段。息が切れるが、丘一帯に住み着いた無数のサルの愛らしいしぐさに癒やされる。頂上では、仏塔に描かれたブッダの目「ブッダアイ」が迎えてくれた。

 参拝後、カトマンズの南に隣接する古都パタンにも足を延ばした。ここにも旧王宮があり、今は博物館として公開されている。内部には静けさが漂い、外の騒々しさがうそのよう。建造物に施された彫刻に見とれ、展示された装飾品や仏像、神像を眺めていると、肩の力がすっと抜けた。

 信仰と伝統が生活の中にとけ込んでいる、と言うと響きは良いが、この国は日本的な常識では測れない。古い寺院の一角に駄菓子店があったり、人が住み着いていたり、仏塔や神像にパンツや靴下が干されていたり。聖と俗がごちゃ混ぜ。そんなおおらかな国民性が、旅人を引きつけるのだろう。

 ●メモ

 日本から約4500キロ。空路は直航便はなく、韓国やタイ経由で乗り継ぎを含めて10時間以上かかる。首都カトマンズのトリブバン国際空港からはタクシーで市内へ。渋滞が多く、所要時間はまちまち。料金は500~1000ルピー(1ルピー=約1円)と交渉次第だ。

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 ●寄り道=天然素材のシンプル服

 ネパールは男尊女卑の考え方が根強いが、女性の地位向上や自立を目指す活動も広がっている。

 カトマンズの南、古都パタンの服飾工房「ネーチャー・アンド・クリエーション」では、ネパール人女性たちが生地の裁断、ミシン掛け、アイロンと忙しそうに働いていた。ネパール産の天然素材からシンプルな服を作り、販売する。

 オーナーは日本人で、幼少期を福岡市東区で過ごした赤池静さん(44)。目指すのは「支援より、富の循環」と言う。パタンの実店舗のほかオンラインショップ(https://www.natureandcreation.com/)もある。


=2017/02/27 西日本新聞=

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