育った自立心 広がる未来 障害ある子にお仕事体験 福岡市「チャレキッズプロジェクト」の2年

西日本新聞

 ●受け入れ企業の理解も深まる

 障害がある子どもたちに早い段階で職業体験や将来設計を考える機会を提供する「チャレキッズプロジェクト」が2015年4月に福岡市でスタートし、このほど2年間の取り組みをほぼ終えた。2月中旬に同市であった発表会では、子どもたちの特性に合わせたキャリア教育の必要性や、保護者や企業関係者らに理解が深まったことなど成果が報告された。

 プロジェクトは、障害者を支援するNPOなどと同市教育委員会の共働事業。プロジェクトの一環で、障害がある市内の小中学生約500人に将来なりたい職業を聞いたところ、1位のパティシエ(47人)に続いて多かったのが「分からない」(32人)。自らの将来像が描けていない状況を変えようと、さまざまな職業を体験し、将来の夢を広げることを目指した。

 最も力を入れたのが、企業などでの「お仕事体験」。2年間で、知的障害や発達障害がある小学1年~中学2年の計64人が、バス運転手やモデル、畳職人など、それぞれが興味を持つ仕事を一日体験した。市内の延べ20業種24社が受け入れに協力した。

 その上で、職業体験をした子どものうち9人それぞれについて、本人のほか保護者や教師、福祉・企業関係者など多様な立場の人が集まり、その子が将来の目標を実現するための方法や過程を具体的に考えるワークショップなども開いた。

 参加者の一人、同市城南区の中学1年山口百夏さん(13)は、小学2年で精神遅滞が分かり、学校では特別支援学級に在籍している。言葉や行動が幼く、人と争うことやじっと見つめられるのが苦手という。

 昨年の夏休みの1日、市内のペットショップで店員の仕事を体験した。犬のしつけやブラッシングに挑戦し、店長ら初対面の大人とも笑顔で接した。百夏さんは「楽しかった。ペットショップの店員になりたい」とはにかむ。

 ワークショップにも参加し、普通科高校への進学の可能性、金銭管理能力や1人で公共交通機関を利用する力を育てる必要性などを指摘された。母親の里美さん(42)は「高校進学は考えていなかったが、視野や選択肢が広がった。学校や家だけではできない体験をさせてもらえた」と喜ぶ。

 百夏さんは今、小遣い帳をつけるようになり、1人でバスに乗ることにも挑戦した。夢に近づくための一歩を踏み出している。

 「障害がある人を雇用するのは難しいという固定観念があったが、方法を工夫すれば受け入れられる」「仕事の仕方がどうやったら伝わるかを考える過程で、基本動作などを再確認できた。受け入れる側の人材育成にも役立つ」。発表会では、協力企業の声も紹介された。

 障害者と企業の双方が心地よい就労の在り方をテーマにしたシンポジウムでは、「障害がある子どもたちが将来設計を考える取り組みを学校にも取り入れてほしい」「学校と企業が連携できれば、就職後も支援が受けやすい」などの意見が出た。

 プロジェクト事務局のラジオプロデューサー中嶋一顕さん(44)は、「子どもたち本人はもちろん、保護者や周囲の大人たちが障害のある子どもたちを見る目が変わり、できることをもっと伸ばそうという姿勢が芽生えた」と手応えを感じている。

 プロジェクトは本年度で終了するが、今後は中嶋さんが任意団体「チャレキッズサポーターズ」として活動を続ける予定。協力企業や参加する子どもたちを募っている。


=2017/03/02付 西日本新聞朝刊=

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