「共生社会」女性目線で訴え40年 月刊誌「あごら」 会員が特選集出版

西日本新聞

 ●「あらゆる差別と戦争は地続き」 「フェミニズムとは生命の尊重」

 1972年に創刊され、40年にわたって女性の立場から人権尊重を訴えた月刊誌「あごら」。福岡市の関係者が特選集「あごら 雑誌でつないだフェミニズム」(石風社)を出版した。8日の「国際女性の日」を前に特選集をひもとき、同誌が目指した「誰もが共に生きられる社会」への思いを振り返る。

 「あごら」はギリシャ語で「広場」の意味。女性解放運動が広がる中、東京で女性の雇用創出に取り組んでいた斉藤千代さん(91)=相模原市在住=が創刊した。さまざまな社会問題について「正確な資料を提供し、事実の裏の構造を注視すること」をモットーに、「働く女と考える主婦が語り合う広場」を目指した。

 会員でつくる支部が持ち回りで編集し、地方からの情報発信にも力を入れた。福岡市の「あごら九州」もその一つで、元短大教授の福田光子さん(88)ら3人で特選集をまとめた。

 創刊号のテーマは「女が働くこと」。女性の労働環境について会員や専門家の意見を紹介したほか、共働きの女性約80人を調査し、妻や母としての悩み、働きがいなどについて個々の声を伝えた。ページ数を節約するため小さな文字でつづったが、それでもA5判の96ページに。1部200円で2千部を発行した。

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 斉藤さんは、自ら現場を見ることにこだわった。

 1974年8月号の「子殺し事件現地ルポ」では、兵庫県に足を運んだ。3人の娘を持つ女性が、4人目も女の子が生まれたことを悩んで殺害した事件。捜査員や近隣住民に話を聞き、事件の背景に、多くの母親にも共通する苦悩があったことを浮き彫りにした。

 91年5月号は、湾岸戦争直後のイラクを取材した。子どもの皮膚の色つや、路上の犬やごみからも、暮らしの実態を読み取ろうとした。その原点にあるのは、東京大空襲の「10万人が燃える臭い」の記憶だ。「戦前、戦中の徹底的な情報封鎖と情報操作が、日本をあの非常識な戦争に導いた」との反省が、斉藤さんの背中を押し続けた。

 「戦争の加害者であり被害者でもあった日本は、戦争を阻止する最先端の位置にいた」のに、湾岸戦争を止めるどころか、130億ドルもの巨費を拠出し関わったことへの憤り。武力による紛争解決を選んだ国際社会に対しても「国連は自殺した」と厳しく批判した。

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 創刊当初から編集に関わった福田さんは、「斉藤さんは『差別が戦争を生む』といつも言っていた。一国の優越感が引き金になるんだと」と振り返る。人種や民族、女性や性的少数者、あらゆる身近な差別と一国の優越感、戦争は地続きだと考えた。

 福田さんは「フェミニズムとは何か。女性解放にとどまらず、生命の尊重であり、共に生きること。それが『あごら』の目標だった」と語る。だが道半ばにして同誌は、会員の高齢化のため2012年に休刊した。

 「誰をも踏みしだくことなく、踏みしだかれることもない」。斉藤さんの言葉は今の時代にこそ重く響く。

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 *特選集は全3巻、各2700円。1、2巻は斉藤さんの記事の一部を再掲し、3巻は「あごら」から展開した活動をまとめている。石風社=092(714)4838。


=2017/03/04付 西日本新聞朝刊=

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