森へおいでよ 筑豊の自然再発見<25>ヤブツバキ 里山の冬を照らす赤

西日本新聞

 雪がちらついた2月のある日、ヤブツバキの花が赤く灯(とも)るように咲いていた。それは、凍えながら春を待つ森を照らしてくれているようにも見えた。

 照葉樹林を代表する樹種の一つ、ヤブツバキ=写真(1)。冬の初めから春まで楽しめる美しい花は、古くから愛され、江戸時代ごろから作られたさまざまな品種はヨーロッパなどにも渡った。

 名の由来は、葉の様子から=写真(2)、「艶葉木(つやばき)」、「厚葉木(あつばき)」が転じたという説などが一般的だが、花が刀の鍔(つば)を思わせるためか、「鍔木」が語源という説もある。花弁が基部で合着(ごうちゃく)している様をそう見立てたのであろう=写真(3)(4)。

 実は、この鍔に例えられる花の造りが、よく似ているサザンカとの見分けポイントになる。サザンカの花弁は一枚一枚離れているのに対して=写真(5)、ヤブツバキは花弁の付け根がくっついている。このためヤブツバキは花ごと落ちる。

 それが、首を落とすことを連想させるからと「忌(い)み花」のイメージがつくられ、現代では病気見舞いなどに用いるのはタブーとされている。しかし、本来は神聖なるものとして神社にも植えられてきた樹木。冬に花をつけることに人々は霊力を感じ、古代から神事などで使われ、奈良の正倉院にも邪気払いの儀式のための「椿杖(つばきのつえ)」が残っている。

 材は緻密で堅く、縄文時代から細工物などに使われてきた。また、種子から採れる油は質が良く、整髪用をはじめ、食用、工業用などに広く用いられている。

 日本の長い歴史の中で、観賞用、神事用、実用にと人と深い関わりがあり大切にされたヤブツバキは、今も里山で身近な樹木として親しむことができる。

 子供のころ、落ちたヤブツバキの花を集めてひもに通し首飾りを作った。観察会の子供たちも、葉で笛を作ったり、開いた果皮=写真(6)を工作に使ったりしている。そんな幼い日の思い出も、木と人がつくる物語であり、自然を大切にする動機になると思う。3月もそろそろ半ば。雪の中で待ちわびた春がようやく姿を見せてくれる頃になった。

(筑豊の自然を楽しむ会=ちくぜんらく・後藤ようこ)


=2017/03/09付 西日本新聞朝刊(筑豊版)=

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