視覚のみを持つ探偵が見つける探し物とは!?人気シリーズ第一弾!

西日本新聞

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探偵・日暮旅人の探し物山口幸三郎著

 本作の主人公、日暮旅人は、五感のうちの四つ、聴覚、嗅覚、味覚、触覚を持たない。残された視覚だけを頼りに、相棒兼マネージャーの雪路雅彦とともに探し物探偵事務所を営んでいる。澄んだ瞳を持つ旅人。その目は異常に発達しており、他の四つを補うために、普通の人には見えないモノまで可視化している。

 主要登場人物は、旅人と名字の違う血の繋がりがない娘、百代灯衣(ももしろてい)。灯衣が通う保育園の保育士で、何かと日暮親子の世話を焼く心根のやさしい山川陽子。旅人の主治医でワケあり連中ご用達の診療所を営む榎木渡。

 よくある推理コメディかと思いきや意外とシリアスな設定が多い。物語全体として、穏やかであたたかみを感じる作品となっているが、なぜ旅人たちは灯衣と一緒にいるのか、雪路と旅人の出会いは、陽子との過去の関係は、旅人が本当に探しているものは、と気になる点がいろいろ浮かんでくる。

 ただし、本作はシリーズ第一弾であるため、それらはまったく明らかにされていない。謎が残されたまま終わるので、物語の真相に迫るには、シリーズを読破する必要がありそうだ。短編仕立てで、テンポよくストーリーが進んでいくので読みやすく、続きを読みたいという読者の好奇心を駆り立てる作品である。シリーズ累計85万部突破にもうなずける。

 旅人が灯衣に向ける愛情、灯衣や雪路が旅人を大切に思う気持ちなどは、作中、言葉で表現される以上に、目の前に在るモノとしてそのぬくもりを感じられる。それらは旅人の視覚と同じように可視化されたものであり、私たちにも『在るモノ』や『愛』を見つけ出すことができるのだと、大切なことに気づかされる。

 本作は2015年11月に特別ドラマ企画「視覚探偵 日暮旅人」でドラマ化された。現在、日本テレビ系の連続ドラマとして好評放送中である。一切感情が動かない松坂桃李の演技力に、原作のファンからも称賛の声があがっている。ドラマから旅人のファンになった人に、ぜひ原作を読んでもらいたい。

出版社:KADOKAWA(メディアワークス文庫)
書名:探偵・日暮旅人の探し物
著者名:山口幸三郎
定価(税込):578円
税別価格:550円
リンク先:http://higurashitabito.jp/


西日本新聞 読書案内編集部