創薬 ネット使い効率化 小児がん向け、佐賀・好生館などのグループ 世界中の端末活用し解析

西日本新聞

 佐賀県医療センター好生館(佐賀市)と京都大、香港大などでつくるグループが、インターネット技術を活用した小児がんの新薬開発研究プロジェクトを進めている。IT企業「IBM」(米国)の技術で世界中で稼働するパソコンなどの処理能力を結び、医療データの解析に必要な膨大な演算能力を確保する。作業効率の飛躍的向上で、新薬開発の実現性を高めたいとしている。

 厚生労働省によると、小児がんの発症者は年間2000人~2500人で、成人のがんの80万人~100万人に比べて格段に少ない。このため、副作用の少ない新薬の開発は成人よりも遅れているという。

 研究対象は神経芽腫や脳腫瘍、腎臓腫瘍、生殖器などに影響する胚細胞腫瘍、肝臓がん、骨肉腫の6種類。ネットワークを活用し、それぞれの薬のもととなる人工物質で、腫瘍を悪化させる悪玉タンパク質の働きを抑える低分子化合物を探り当てる。

 具体的には、コンピューターグラフィックス(CG)画像で体細胞の表面にあるタンパク質の受容体と、候補となる数百万種類の低分子化合物のデータを組み合わせて適合する物質を算出する。従来のコンピューターでは膨大な年月を要し、物質の特定は困難だったが、ネットワークを使えば2、3年で算出できるという。

 ネットワークは世界中の個人や企業が所有し、専用ソフトを入力したパソコンやタブレット端末など300万台で構成。電源を付けたまま未使用状態になると、データを受信した各端末が自動的に作業を分担して算出する。IBMは、社会性の高い学術研究にネットワークを無償提供し、昨年12月から今回のプロジェクトを支援している。

 先行例としては、プロジェクトの責任者である好生館の中川原章理事長が千葉県がんセンター長を務めていた2009年~13年、千葉大と協力し、神経芽腫の増殖を阻む低分子化合物を300万種類の候補から7種類に絞り込んだ。

 中川原理事長は「小児がんは2~3割の患者が助からず、治療に成功しても後遺症や二次がんのリスクがある。多くの人が新薬の開発を望んでいる。高度なネットワークを生かし研究を成功させたい」と話している。


=2017/03/11付 西日本新聞朝刊=

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