育 鍛えてもらったから 玄界灘祝い唄(6)

西日本新聞

 玄界灘を見渡す津屋崎浜(福岡県福津市津屋崎)。冬休みのある日、浜に面した県立水産高からアクアライフ科の2、3年生6人が小舟を海に下ろし、沖へとこぎだした。

 養殖するワカメの成長を確認するためだ。3週間ほど前に種苗を植え付けたロープを海中から引き揚げると、茶色いワカメは長さ25センチほどに伸びていた。生育をよくするために、伸びた部分をはさみで一部刈り取る。「根元から切ったらいかんよ、伸びなくなるから」。高い波に揺れる船上で3年の村上弘明さん(18)が初めて刈り取りを経験する後輩に声を掛けた。

 県内で唯一の水産高には船員や機関士、潜水士の養成、食品流通、漁業経営など海に関わる多様なコースがある。沿岸漁業や養殖業を育成するアクアライフ科の生徒は3年間、ヒラメを育てて地元の海に放流したり、アユやコイ、ヤマメ、ウナギなどの淡水魚養殖にも取り組む。

 村上さんは北九州市から1時間以上かけて同高に通う。魚や釣りが好きで入学し、漁業経営コースで漁や操船、養殖などの技術を学んだ。実習で海釣りに行き、地元漁師からさばき方まで教わった。自分で釣ってきたアジを太らせて食べようと海水槽に入れておいたら、後輩の漁のえさにされてしまったことも。収穫したワカメは校内で塩ゆで塩蔵し、地域イベントで販売する予定だ。

   ◇   ◇

 この春、村上さんは福岡中央魚市場(福岡市中央区)に就職する。「3年間、魚のことばっかり勉強したので、絶対に魚の仕事をやろうと決めていた」。市場の見学実習で、その活気に驚いた。早朝、次々に運び込まれるトロ箱、呪文のような競り文句…。「漁師と仲買人との間に入って、競りをしているのが楽しそうだった」という。市場にも漁師にも仲買人にも、水産高OBが大勢いる。

 ただ、同高の卒業生で実際に海に関連する仕事につく生徒は半数程度だ。後継者が不足する漁師への誘いは多いが、希望する生徒ばかりではない。一方でアクアライフ科の生徒に人気が高い養殖業界からの求人は今年は3、4社しかなかったという。村上さんと同じ船でワカメを引き上げた別の3年生2人はそれぞれ、水産業とは全く違う分野の看護系、航空系の専門学校に進む道を選んだ。

 村上さんは、この学校で学んだことは水産業以外にも生かせると感じている。「同級生の中には、魚の骨や貝殻を肥料にする研究がきっかけで、農業を志す人もいる。自分のやりたいことに向かう勢いを、海で鍛えてもらったと思う」

 渦巻くような競りの喧噪(けんそう)の中で、魚のそばに立つ日が楽しみだ。

 第7回「架 給食にぎわす旬の地魚」

=2017/01/08付 西日本新聞朝刊=

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