架 給食にぎわす旬の地魚 玄界灘祝い唄(7)

西日本新聞

 旬のカナトフグのぷっくりとした白身に天ぷら衣をつけて揚げる。揚げたてをほおばると、衣はサクッと軽やか、魚の身は驚くほどふんわり。「ほんの少しの塩味で、魚そのものを味わってもらおう」。試作をしながら、福岡県宗像市立河東西小の栄養士、亀井寿子さん(57)はわくわくする。

 子どもたちが食べる給食の献立を考えるのが亀井さんの仕事だ。イカ、タコ、ブリ、サザエ…。漁港が近い同市の給食には、地元の魚がたびたび登場する。宗像漁協と給食栄養士とが意見交換する会議があり、漁協から「こんな魚を給食に使えないか」と打診もある。去年はサワラが大漁で何度か使った。

 脂ののったダルマダイはフライにするとほくほくと身がほぐれ、ほのかに甘い。冷凍品との違いは子どもたちにも分かるようで、食べ残しがほとんどなかった。逆に、あまり料理したことがないシイラを煮付けにしたものの子どもたちの反応はよくなかった。「他地区ではこんなに多様な魚に触れる機会はなかった。栄養士が鍛えられる地です」と話す。

   ◇   ◇

 宗像市はセンター方式だった小中学校の給食を、1998年から段階的に自校式に切り替えた。センターの調理員だった亀井さんはこれを機に、各校に配置する栄養士として学校給食に携わることになった。

 自校で献立を作ることによって、地元産品を採り入れやすくなったが、壁になるのは価格。カナトフグは1人前45グラムで200円近くかかり、冷凍フライの数倍になる。昨年夏以降は野菜が高騰して食材費を削るしかなく、例年なら冬の定番であるブリの登場を見合わせた。それでも「こんな鮮度のいい魚を給食に使えるのは幸せ」。1食あたり243円の給食費をやりくりしながらいかに玄界灘の旬の魚を味わってもらうか、栄養士の腕の見せどころだ。

 魚を食べない家庭が増え、給食でしか魚に触れない子どももいる。揚げ物だと食べやすいが、魚にはいろんな味わい方があることを知ってほしいと願う。タコやサザエはご飯に炊き込む。イカはゆでて郷土料理の「どろぼう和(あ)え」(酢みそ和え)にすると身がコリコリと甘く人気メニューの一つだ。「きょうのイカは宗像で捕れたとよ」と話すと子どもたちは「えー、そうなん」と口に運ぶ。保護者から「レシピを教えて」と頼まれることもある。給食が魚と家庭をつなぐ架橋になっていると実感する。

 漁協から「今度はアナゴを使ってみて」と頼まれた。アナゴの旬は夏。小骨が多く処理が大変だが、真っ白な身は美しい。揚げてみるか、白焼きにするか…。

 間もなく3学期。また楽しい試行錯誤が始まる。

 第8回「食 3代目として、母として」

=2017/01/09付 西日本新聞朝刊=

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