今天中国~中国のいま(2) 負けない庶民の知恵

西日本新聞

 「中国は『官』が強いんですよ」と、北京の知人は嘆く。突き詰めれば、官とは共産党のことである。

 飲食店などが立ち並ぶ小さな商店街に突然、地元政府の役人が訪れ、「立ち退け」と命じた。嫌がらせのように、食事中の客に「代金は支払わなくていいぞ」と言ったり、店の備品を運び出したりしたという。

 周辺には一部、無許可営業の店があった。「法治の推進」は習近平指導部の重要目標。違法な店は言語道断、というわけだ。

 とはいえ、正式な営業許可を受けた店にも同じ扱い。許可を取るように指導もせず、なぜ急に立ち退きなのか。経営者たちが四方八方手を尽くして調べると、近隣の党の有力機関が、その場所を利用したいと希望していることが分かった。

 小売店を経営する30代女性は抵抗した。営業許可証を見せると役人はたじろいだが、今度は消防局への出頭を命じられた。消防法違反の疑いがあるという。

 そこで一計。女性は1歳半の息子を連れて消防局に出向き、担当者の目の前で、わざと大声で泣いて見せたのである。母親につられて息子も号泣した。

 「一人っ子政策」が長く続いたこともあってか、中国の人々は赤ちゃんと母親にとても優しい。バスなど公共交通機関では、争うように席を譲り合う。泣かれた担当者は困ったのだろう。「もういいよ」と許してくれた。立ち退き話はその後、進んでいない。

 「息子が泣かなかったら、お尻をつねるつもりでした」。女性は舌を出した。

 中国には「上に政策あれば、下に対策あり」という言葉がある。官は強いが、庶民も負けていない。 (北京・相本康一)

 =随時掲載

=2016/12/26付 西日本新聞朝刊=

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