今天中国~中国のいま(16) 味も変えた「反腐敗」

西日本新聞

 「久々に北京に赴任したら、料理の味が変わっていて驚きました」と、中国通のベテラン外交官は語る。彼の説によると、背景には反腐敗運動があるという。

 2012年に発足した習近平指導部は、共産党員の綱紀粛正を目指し、いわゆる「ぜいたく禁止令」を出した。結果、各地の高級料理店が閉店に追い込まれた。公費を湯水のように使っていた党幹部たちの足が遠のき、商売にならなくなったためだ。それに伴い、多くの料理人が転職した。

 もちろん、全ての店が閉店したわけではない。辞めた料理人の代わりに地方出身の出稼ぎ者が採用され、次第に「北京の味」が変化してきたのだという。

 反腐敗運動は、権力闘争の文脈で語られることが多いが、中国の歴史に照らしてみると興味深い。

 10世紀に成立した中国の宋王朝は、隋王朝の時代から始まった「科挙」制度を全面導入した。科挙とは誰でも試験に合格すれば官僚に登用される制度。宋の時代以降、それまでの貴族制(世襲制)が世界で最も早く廃止された一方、出世した人間が富を得て家族、親族や友人の面倒を見るのは当たり前となった。

 腐敗で失脚した共産党幹部の容疑内容をみると、必ず親族や友人に便宜を図ったという構図が浮かぶ。千年以上続いた“慣行”は、新しい国造りを目指した共産党中国にも色濃く残っているということか。反腐敗運動はそこにメスを入れる意味もあるわけだ。

 北京の知人はこう表現した。「習大大(習おじさん)は、中国の伝統と戦争しているようなものです」 (北京・相本康一)

=2017/02/08付 西日本新聞朝刊=

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