医者ぎらい 今度ばかりは 頭下げ がん川柳 五・七・五だと言える 不安や愚痴 ユーモア交え心をケア

西日本新聞

 「サラリーマン川柳」から「シルバー川柳」まで、幅広い層に人気の川柳だが、ここ数年じわりと広がりを見せているのが「がん川柳」だ。直接言葉にしづらい命や病気への不安も五・七・五に乗せれば吐き出しやすく、患者や家族の心のケアにもつながるという。

 「医者ぎらい 今度ばかりは 頭下げ」「ガンよなぜ 夫にばかり すがりつく」

 大分医療センター(大分市)の外来フロアには、クスッとする作品からホロリとくるものまで、全国のがん患者や家族、支援者が詠んだ「がん川柳」が並ぶ。

 企画したのはセンター内にあるがん相談支援センターの岡江晃児さん(34)と広田紘子さん(38)。「人前で話すのが苦手な患者さんにも自分の思いを表現する場を」と、2014年から作品を募集した。作品は年度ごとに小冊子にまとめ、無料で配っている。

 胸腺がんを患う大分市の吉村裕行さん(79)も応募者の一人。「ガン告知
 雁(がん)はとぶねと 孫がいい」で15年度の優秀作品に選ばれた。「余命5年」の診断結果を福岡県内に住む長女に伝えた時、電話越しに、孫が「鳥の雁は遠くに飛んでいくよ」と話すのが聞こえたという。「今は社会人の孫娘ですが、小さかったころのイメージも重ねました」と吉村さん。抗がん剤治療中の今も、ふと浮かんだ句は手帳に書き留める。「思ったことを川柳にすると、ちょっと気持ちが軽くなりますね」

 「愚痴でもいい。人は『出す』ことで心の重荷を解き放すことができる」と九州がんセンター(福岡市南区)の大島彰医師は言う。サイコオンコロジー(精神腫瘍)科で、がん患者や家族の心のケアなどに当たる。大島医師が着目するのは川柳や俳句の字数の少なさ。「限られた中に思いを込めるには考えを整理することが必要で、気持ちに区切りをつけやすいのでは」と分析する。

 大島医師も理事を務める福岡市のNPO法人ハッピーマンマも7年前から「がんとこころ」をテーマにした作品を募集している。「胸欠くも 胸を張りつつ 前進む」「声からね 生きる強さ 伝わるよ」。こうした受賞作品はホームページで閲覧できる。

 大分医療センターやハッピーマンマには、読んだ人から「言葉に救われた」「ユーモアで笑い飛ばせるなんて、勇気が出た」といった感想がよく届くという。

 「私たち支援者にとっても川柳はがん患者の気持ちを理解する重要な手だてになる」と考える岡江さんは「川柳を通して、地域や社会にがん患者の思いを発信していくことが、がんという病への理解にもつながる」と話している。 

 大分医療センターの小冊子についての問い合わせはメール=okae@oita2.hosp.go.jp=で。

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 「がん川柳」はどう始めたらいいのか。西日本新聞TNC文化サークル「アイ&カルチャ天神」で川柳を指導する清野玲子講師は「必要なのはペンと紙だけ。難しく考えず、自分をメモする感覚で」とアドバイスする。病と闘う中で起きたエピソードや感情を、日記代わりに五・七・五に込める。作品集などを読んでイメージをつかむのもいいそうだ。仲間がいると始めやすい。患者同士が難しければ、各地にある川柳教室や川柳サークルに参加する方法もある。「お互いの気持ちの状態を理解し合う場ができ、世界が広がりますよ」と清野講師。アイ&カルチャ天神への問い合わせは電話=092(721)3200。


=2017/03/31付 西日本新聞朝刊=

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