重度障害あっても通学 ヘルパーと北九州市立大に通う岩岡さん 国費で実現、市も事業化

西日本新聞

 首のけがが原因で人工呼吸器と車椅子に頼る岩岡美咲さん(28)=北九州市小倉南区=は昨春から、専属ヘルパーの支援を受けて北九州市立大に通っている。通学や学内移動は原則、障害福祉サービスの対象とならないが、国のモデル事業で支援が実現した。2017年度は市も通学支援事業を始める。「私ができることは、みんなできるよ」。10日から、岩岡さんの学生生活2年目が始まる。

 岩岡さんは夜間特別枠で地域福祉を学ぶ。自宅から路線バスに約10分揺られ、大学最寄りのバス停で降りるとキャンパスへ。教室では、大学が用意した専用の机にパソコンを置いて授業を受け、顎に貼ったシールでパソコンを操る。帰宅するまで、専属のヘルパーが寄り添う。

 器械体操選手だった岩岡さんは高校2年の夏、大会中に頸髄(けいずい)を損傷、全身にまひが残った。気管切開して人工呼吸器を着け、外出する機会は減った。

 14年、同じ障害がある友人が口にくわえる人工呼吸器を教えてくれたことで、気管を閉じる手術を受け、声が出せるようになった。これを機に「もっといろんな福祉制度を知りたい」と大学進学を志す。翌年末、北九州市立大に合格した。

 入学が障害者差別解消法施行と重なり、大学は教材を電子データ化するなど配慮したものの、通学や移動の壁が残った。一定以上の重度障害者に提供される重度訪問介護などは「通年かつ長期にわたる外出」などを対象としない。市町村による移動支援も通学を対象とするかどうか、地域でばらつきがある。

 岩岡さんは市に相談したが、当初は保護者に付き添いを頼むか、自費でヘルパーを雇わなければならなかった。行政や障害者団体などに相談を重ね、大学などへの通学支援の在り方を研究する国のモデル事業にたどり着いた。現在、全額公費でヘルパーを雇う。「これがなかったら、大学は諦めていた」と岩岡さん。ただ、モデル事業は本年度1163万円だが新年度に約800万円に減る。市はその不足分を補い、他の人にも利用してもらおうと新年度から通学支援事業(600万円)を始めた。

 大学では、体育の授業で車椅子ソフトボールを楽しんだり、他学部の学生と触れ合ったり、世界が広がるのを実感するという。岩岡さんは「最初はお互いに戸惑うけど、障害について知ってもらえたら当たり前に接してもらえた」と笑う。

 「自分に何ができるんだろう」。体が動かなくなってからずっと考えていた。今は「私の姿を見て、他の障害者が挑戦する気持ちを持ってもらえたらうれしい」と、生きる意味をかみしめている。

 ●補助に地域差 財源の課題も

 厚生労働省の調査(2013年度)によると、全国1737市町村(1広域連合含む)のうち、通学支援を移動支援事業として「特段の要件なく認めている」は9%。保護者が病気や出産で付き添えない、通学路を覚えるための訓練など「一定の要件の下に認める場合がある」が48.1%。39.8%は「通学の支援を目的とした利用は認めていない」。

 九州では、福岡、佐賀、長崎、熊本、大分各市は原則認めず、例外的に認める場合がある。宮崎市も原則認めていないが、月4回まで用途を問わず使える移動支援もある。鹿児島市は月15時間までなら通学でも利用できる。各市は「通学支援を認めると、対象者が増えて財源や人材の確保が難しい」という。

 一方、北九州市は17年度、全身に重い障害がある大学生などが通学や学内移動のためにヘルパーを雇う費用の補助を始めた。国は通学支援の現状を問題視しており、社会保障審議会で支援の在り方について議論を重ねている。


=2017/04/06付 西日本新聞朝刊=

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