今天中国~中国のいま(30) 時代遅れの「印鑑病」

西日本新聞

 「ある地方政府で108個の印鑑を使用禁止にし、一つで済ませるようにした」。3月の記者会見で、就任以来の成果を外国人記者から問われた際、李克強首相が挙げた例の一つだ。一瞬首をかしげたが、行政手続きの簡素化・迅速化をアピールしたかったらしい。

 “お役所仕事”はいずこも同じだが、中国のややこしさは有名。プロジェクトの許認可を得ようと政府部門を回り、100個以上の印鑑を押してもらう間に、事業は「時代遅れ」になった-そんな中国財界人の嘆きが報じられたこともある。一部で「中国経済の病巣」「印鑑病」と呼ばれる。

 「人治の国」だけに、有力なコネがあれば別。腐敗も生まれやすい。影が薄いと評される李首相だが、年初の政府会議で4年連続、行政の簡素化を議題にするほど力を入れている。

 一方、民間ビジネスのスピード感はすごい。急速に普及したシェアリング自転車が典型。法令上問題ないかどうかの検討は後に回し、トップのひと声でアイデアを事業化する。もちろん、成功するとは限らない。

 「日中のギャップが大きすぎて悩ましいです」。かつて日本企業で働き、現在は中国企業に勤める北京の30代女性は苦笑する。

 彼女の会社は日本企業と共同事業を進めている。中国人上司は前日とは正反対のプランでも思い付いたらどんどん提案するが、日本側は「石橋をたたいて渡る」式が信条。「検討する」との回答が多く、窓口役の彼女は板挟みなのだそうだ。

 日本式と中国式、それぞれ長所と短所がある。企業文化の違いは、社会のありようを物語るようで興味深い。 (北京・相本康一)

 =随時掲載

=2017/05/02付 西日本新聞朝刊=

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