介護保険外サービス 注目集める 「在宅」ニーズの受け皿に 課題は採算 団塊の需要に期待

西日本新聞

腰の痛みで買い物に行けない利用者から、買い物の要望を聞く田上奈美子さん(左) 拡大

腰の痛みで買い物に行けない利用者から、買い物の要望を聞く田上奈美子さん(左)

 団塊の世代が75歳以上となる2025年を控え、公的な介護保険に頼らない「介護保険外サービス」が注目を集めている。要介護認定を受けていない高齢者に細やかな支援をしたり、介護と仕事を両立する家族のニーズに応えたり、介護費削減で公的サービスからこぼれ落ちる人の受け皿になったりする可能性を秘めている。

 「膝の具合はいかがですか?」。購入を頼まれたポリ袋を手に、見守りネットワークきずな事務局(長崎県佐世保市)の田上奈美子さん(37)が1人暮らしの女性(88)宅を訪ねた。女性は「大丈夫。この前の草むしりもありがとう」と、笑顔で迎えた。

 女性は、きずなの買い物代行(1回300円)や草むしり(30分千円)などを頻繁に利用している。要介護認定はないが、膝が悪く、バスでの買い物や庭の手入れはきつい。女性は「頼みやすくて家族のような『きずな』があるから、住み慣れた家で1人暮らしが続けられる」と感謝する。

 きずなは11年11月、建設会社堀内組(同市)が地元商店街などと連携し、長崎県の買い物弱者支援のモデル事業の運営主体として立ち上げた。モデル事業が終了した13年度以降、同社の事業として生活支援などの保険外サービスを続けている。

 利用者は12年度の88人から、16年度は280人と約3倍に増えた。対象は原則、要介護認定がなく、支援の必要性が高い独居高齢者などに限っている。医療機関から退院患者の支援を依頼されるなど、地域の医療福祉関係者との信頼関係ができたことで利用が伸びたという。

 介護福祉士でもある田上さんは「ぎりぎりで要介護認定されず、自宅で過ごす高齢者ほど困っている。ちょっとした支援で生活の質が上がる」と保険外サービスの必要性を実感する。

 ただ、16年度は人件費など約1200万円に対し、売り上げ200万円と大幅な赤字。地域の高齢者とのつながりが住宅リフォームなど別部門の需要掘り起こしにつながるメリットはあるため、担当取締役の天島道夫さん(58)は「地域貢献の意味も大きく、採算性を高める努力をしながら続けたい」と話す。

 経済産業省や厚生労働省などは昨年3月、こうした保険外サービスの事例を集めた「保険外サービス活用ガイドブック」を作成した。配食や見守りなど多様なサービスを提供する全国の39事業者を紹介している。

 福岡市は昨年10月、市内の保険外サービス事業者を検索できるウェブサイト「ケアインフォ」を開設した。自治体主導の取り組みとしては全国でも珍しく、保健福祉局政策推進課は「今後、保険外サービスの需要は高まる。市としても情報を把握する必要がある」。現在、55事業者のサービス93種が登録され、想定を超える月約700件のアクセスがあるという。

 国のガイドブック作成に関わるなど、保険外サービスに詳しい日本総研の紀伊信之マネジャー(41)は「介護保険による『公助』やボランティアによる『互助』には限度があり、在宅介護には『自助』の充実が求められる。今の要介護世代に比べ、消費することに慣れた団塊の世代が対象になれば、ビジネスの可能性も大きくなる。在宅介護や介護と仕事の両立を助けるサービスは増えており、利用する側も積極的に情報を集めれば選択肢が広がる」としている。

【ワードBOX】介護保険外サービス

 利用者が1割(所得によって2割)負担で利用できる公的な介護保険サービスと違い、利用者が全額自己負担して使うサービス。要介護度によって決まっている限度額を超えて利用する介護サービス、介護する同居家族の食事の用意など介護保険対象外のサービスなど、多様に提供されている。現行制度では、介護保険サービスと保険外サービスは同時に提供できないが、こうした「混合介護」解禁の議論も進んでいる。


=2017/05/11付 西日本新聞朝刊=

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