今天中国~中国のいま(36) 温泉は「食わず嫌い」

西日本新聞

 日系企業が営む北京の高齢者介護施設を取材した時のこと。「日本式介護」は好評なのだが、家族から思わぬ「不満」が出たという。浴槽に湯をため、入所者を入浴させようとすると「衛生的にどうなのか」と。

 中国人の知人に聞くと「知らない人が使った湯は、ちゃんと洗ってから入ったのか、確かに不安です」。中国の公衆浴場はシャワーだけで湯船がないケースも多いという。北京は乾燥しているので必要ないとか。

 北京で会った中国人外交官OBの話を思い出した。彼は九州など日本で勤務した数年間、一度も温泉には行かなかった。「他人が入った湯にどうしても抵抗感があった」。その後、出張で訪日した際、温泉街の旅館に宿泊したらしい。当時、文書を作る仕事を抱えていて連日徹夜状態。試しに温泉に入ってみたら…。

 「驚きました。これほど気持ちの良いものだったのかと」。雪が降り積もる中、露天風呂も体験。疲れが一気に吹き飛び、仕事がはかどったという。「それ以来、大の温泉ファンです」

 中国に温泉がないわけではない。陝西省西安市では、絶世の美女と言われた楊貴妃が湯あみした「華清池」が観光地になっている。最近は日本式の温泉施設が各地に登場。上海では昨年12月、東京の温泉施設にそっくりな施設ができ、話題になった。訪日旅行ブームが影響しているのだろう。

 文化や習慣の違いに基づく「食わず嫌い」は誰にでもある。やはり、体験に勝るものはないようだ。

 熱いお湯に漬かると、気持ちもほぐれるもの。日中両国の指導者にはぜひ一緒に味わってほしいものだ。 (北京・相本康一)

 =随時掲載

=2017/05/23付 西日本新聞朝刊=

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