森へおいでよ 筑豊の自然再発見<35>毒虫は不可か? 知彼知己 不亦楽乎

西日本新聞

 ●知彼知己 不亦楽乎(かれをしりおのれをしれば またたのしからずや)

 野山で遊びたくなる季節である。今回、そんな気分に水を差すむしを紹介する。

 まずは、ムカデ。夜行性のため昼間はあまり出合わない。しかし、朽ち木や倒木をひっくり返したりすると現れることがある。ムカデは歩いて刺す、とも言われるが大間違い。歩くだけでは何もしないし=写真(1)、そもそも刺さない。ただし、体の一部を押さえるなどすると何度も咬(か)みつかれる。

 次に、マダニ。やぶこぎすると幼ダニにたかられることもある=写真(2)。動物が発する二酸化炭素や酪酸(らくさん)、体温や振動に反応するという。口器で皮膚を切り裂いて差し込み、セメント様物質で固着するらしく、容易には除去できない。成ダニは体長2ミリメートルほどであるが、十分な吸血後には1センチメートル近くにまでなる=写真(3)。その後、セメント様物質を溶かし皮膚から離れる。皮膚には小さなしこりが残り、いつまでもかゆい。ちなみに、重症熱性血小板減少症候群(SFTS)などの感染症の危険も伴う。肌の露出は少なくすべきであろう。

 次は、ブユ。ぶよ、ぶとなどと呼ばれる。たかだか3ミリメートル程度のアブなどの仲間であるが=写真(4)、カとは比べ物にならないくらいに腫れる。さらにブユは、カのように口器を刺して血を吸うのではなく、咬んだ後に血液を凝固させない唾液を分泌してなめる。このため小さな咬傷(こうしょう)の割に出血が多くなる=写真(5)。なお、ブユの幼虫は清流の石などの表面に付いている=写真(6)。そして水質階級1(きれいな水)の指標生物でもある。ゲンジボタルが水質階級2(少しきたない水)なので、増やしてバラまかれたゲンジボタルが光る場所より、ブユに咬まれる場所の方が水がきれいという…。

 最後に、ツチハンミョウ。これでも甲虫である=写真(7)。青光りして美しいが、「みちおしえ」と呼ばれるハンミョウとは無縁である。ツチハンミョウは、むし側から危害を加えることはない。ただ、うかつに押さえたり、つぶしたりすると、カンタリジンを含む体液で皮膚に水疱(すいほう)ができるらしい。

 水を差すどころか、相手を知り、かえって楽しみが増えたかもしれない。毒虫を理由に、野山や川をむざむざ諦めることはない。

【筑豊の自然を楽しむ会(ちくぜんらく)・岸本×太(ばった)】


=2017/05/25付 西日本新聞朝刊(筑豊版)=

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