「ここで生きるネット」発 加留部貴行・日本ファシリテーション協会フェロー

西日本新聞

◆住民対話の場づくり 地域力創出へ人を「まぜよう」

 肩書のファシリテーションとは「~しやすくする」という意味合い。組織内、産学官民、老若男女、地域と地域などを「対話」を大事にしながら「つなぐ」場づくりを担っている。依頼で多いのが「とにかく直接会話をする場を作ってほしい」。現代社会は「こんなにもつながっていないのか」と痛感している。

 人口の過疎過密に関係ない「人のつながり」の限界集落化だ。職場では、パソコン、スマホの画面に向き合い、人と向き合っていない。「雑談」が絶滅危惧種になり、喫煙所と湯沸かし室で、わずかに残存。地域では「井戸端会議」が減り「人ごと」が増殖している。

 個人対応型の通信機器や生活用品、ライフスタイルが普及するのと連動して、この20年間、個別化、孤立化が進み、人と人の共有空間や共有時間が削られた。そこに人口減少と少子高齢化が加わった。さらに分配が中心だった右肩上がり時代が終わり、模範解答がない中で、解決方法も答えも皆で探さねばならない。地域でいえば、多様な立場・世代・職種、他地域とも否応(いやおう)なしに、つながる方向に向かわざるを得ないと感じている。

 地域の活力持続に必要だと思うのは(1)東京基準ではない身の丈の価値観・幸福感(2)多様性を受け入れる地域性(3)自立と自律への覚悟-だ。(1)は「ここにしかないから、ここで暮らす」豊かさやお宝を見つけ、磨き、共有する。(2)は「対話」や「つながり」を豊富化し、(1)の質を高める。(3)はエンジン。やる気と行動なしに進まない。

 私がアドバイザーを務める山形県酒田市の総合未来計画会議では、こうした点を意識して市民100人が参加する総合計画づくりに取り組んでいる。熊本県職員有志が開発した自治体財政シミュレーションゲームSIM2030を総合計画策定プロセスに全国初導入。ワークショップは対話に力点を置くとともに、構成メンバーの3分の1ずつを中高大生と無作為抽出した市民としたのが特徴。外部の目に触れるように工夫しながら、見えない弱点発見、財政難による施策順位付け試行などを重ね、紡いだビジョンを基に未来の新聞づくりへ進行した。高校生が「酒田に住み、酒田で働きたい」、おばあちゃんが「地域の事を学べるし、とても楽しい場」と発言している。まさに「ここで生きる」です。時代は「まぜる」を求めている。多様な対話から、居場所が鮮明になり、イノベーション(変革)が生まれる。そう実感している。 (談)

 加留部 貴行氏(かるべ・たかゆき) 1967年生まれ、福岡市在住。企業、大学、行政、NPOの4部門の経験を生かし、議論の合意形成等を支援するファシリテーションを実践。九州大学大学院客員准教授。


=2017/05/26付 西日本新聞朝刊=

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