今天中国~中国のいま(38) 変貌する胡同の今昔

西日本新聞

 「胡同(フートン)」とは、北京市中心部に点在する古い街並みのことだ。700年ほど前の元王朝時代に由来する。

 故宮の真っすぐ北にある南鑼鼓巷(ナンルオグーシャン)の周辺もその一つ。かつては皇帝に仕える官僚たちが住んでいたのだろうが、革命や建国の混乱を経て、庶民の街になった。

 細い路地を歩くと、住民が椅子を置いてくつろいだり、マージャンを楽しんだりしている。「街全体が自分たちのリビング、という感覚なんです」と住人の女性(30)。幼少の頃は共同トイレで、調味料の貸し借りは当たり前という濃密な生活共同体だったらしい。

 近年、四合院と呼ばれる伝統家屋を改造した飲食店などが出現。2014年には習近平国家主席が視察し、観光地として定着した。

 ところが、当局は「違法改造」に眉をひそめているようだ。取り締まりに乗り出し、昨年は200店以上に是正を命じたという。「最近まで大きな窓だったんですよ」。女性が指さしたカフェの片側は、れんがやコンクリートの壁になっていた。閉店するケースもあるとか。有無を言わせぬやり方は今の中国らしい。「歴史的な姿を回復する」という掲示も見掛けた。

 南鑼鼓巷の商業地化にはさまざまな意見がある。そもそも、大規模開発で消失してしまった胡同は数多い。当局はようやく景観保存の大切さに気付いたのかもしれないが、胡同には庶民が使いやすいように改造を重ねてきた歴史があるし、にぎわいも捨てがたい。

 「新しい姿も生かしつつ、コミュニティーを残せればいいのですが」と女性は話した。新旧の魅力が併存する古都の街づくりは難しい。 (北京・相本康一)

 =随時掲載

=2017/05/30付 西日本新聞朝刊=

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