<5>ちょっと切るはずが…「全摘告知」にショック
「乳管のがん」と告知されたその日、担当医から治療方針の説明がありました。しこりとその周囲1~2センチを切除する「温存手術」をし、その後に放射線治療が必要とのこと。
大した胸じゃありませんが、術後の胸の変形が心配でした。変な言い方ですが「せっかくの0期」。自分の体に大きな痕跡が残るのは嫌だったのです。
それが、ぜいたくな悩みだったと思い知ったのは2週間後。手術前に受けたMRI検査で、乳管内にがんの広がりが確認され、全摘が免れなくなりました。「おとなしい性質のがんなので、乳管の壁を突き破らず、乳管内に広がったのでしょうね」と担当医。
私自身も誤解していたのですが、実は温存か全摘かは、病気の進行度とは別の話。初期のがんでも、乳管内の広がりがあったり、複数しこりがあったりすると、部分切除でも胸の形がきれいに残せず、全摘を勧められることがあるのです。
「この私が全摘?」。心が立ち尽くしました。ほんと言ったら、乳がんだって、部分切除だって嫌でした。故郷の日本海に向かって「何で~」と叫びたかった。でも何とか自分を保っていられたのは胸が残せると思っていたから。「乳がんといっても超早期」「ちょこっと切るだけ」。そう周囲に話すことで「こんなのへっちゃら」とおまじないをかけてきたのです。
「仕方ないですね」。うつむく私に担当医が「もし興味があれば」と紹介してくれたのが、乳房再建という道でした。
といったところで、今の話。実は入院中です。大型連休中に娘が見た胸の膨らみは生理食塩水のおかげでしたが、シリコーン製の人工乳房を入れて“本物の膨らみ”を取り戻す予定。いい胸ができますように。
(四十物恵妙=西日本新聞契約ライター)
2017/05/29付 西日本新聞朝刊