プログラミング(1)気づき ある理系講師の模索

 パソコン画面の一角。そのブロックには矢印、メーター、シャープの三つの記号があり、各記号下の□には数字を入力できる。子どもたちが矢印の下に「50」と入力すると、パソコンにつながれた車ロボットは右に90度曲がり、「100」と入力すると右に180度曲がった=イラスト参照。

 2020年度から小学校で導入されるプログラミング教育に向けた、授業実践の一こま。□にどんな数字を入れるかで車の動く方向、速さ、距離が変わる。連動する動きを見ることで、記号と数字が持つ意味を導き出していく。

 電子黒板などのICTを活用した授業に取り組む福岡県柳川市の市立豊原小学校(146人)。佐藤瑞穂講師(27)は14年から、同校で算数と家庭科を教えながら、プログラミング教育に取り組んでいる。

 大学は、システムエンジニアたちを養成する理工学部の「知能情報システム学科」を卒業。「プログラミング言語」と呼ばれる記号を組み合わせ、コンピューターを作動させる原理やノウハウを学んだ。「理系だから教えられる」と思われがちだが、実際は「自分がプログラミングするのと、小学生に対して教えるのとでは、まったくの別物だった」と言う。

   ◇   ◇

 授業案づくりに向け、佐藤講師がまず出向いたのは、企業が教員を対象に開いていたプログラミング教育の研修会。休日に福岡市まで通い、ブロックを使った車ロボットの制御プログラムを知り、教材に決めた。

 次は何をどう、どこまで教えるか。ペアで授業をする担任教諭とともに、職員室の後ろの床で車を走らせながら、考える日々が続いた。

 15年9月、研究発表会で授業を公開した。6年生を対象に実践した授業は、それまで学んできた指令ブロックの特性を使い、プログラムを組み立てて車をゴールまで動かす、というもの。でも、子どもたちは決められた動き以外にも、いろいろな動きに興味を持ち、次々と試してしまう。ゴールできないグループもあり、狙い通りにはいかなかった。

 「子どもたちが出す『結果』にばかり目がいっていた」

 ある意味で「失敗」だったかもしれないこの授業。佐藤講師にとっても、多くの学びがあったという。「プログラミングはあくまでツール(道具)で、一番大切なのは子どもたちが考える『過程』」。「失敗」の中にこそ、実は深い学びや、子どもたちのワクワク感があることに気づかされた。

   ◇   ◇

 当初は、子どもたちが「動きの指令を出すブロックの法則を発見できたか」「車を思い通りに動かせたか」を重視した。でも今は「その前の段階で、子どもたちが頭の中で何を考え、何をどう試したのか」に、より着目している。授業では、ホワイトボードに随時、子どもたちが考えた経緯(思考の過程)をメモし、独自のワークシートに結果をまとめるようになった。

 「今、なんでそう思ったのかな」「どうして分かったのかな」。授業中、そんな声掛けにも努める。それまで見えていなかった子どもたちの「気づき」をたくさん見つけることができるからだ。

 例えば、ブロックの法則を見つけるとき、記号と数字の両方を変えても法則は見つからないが、変数の一つを固定すると、法則は見つかる。そのことに気付いた児童は「先生、理科の実験のやり方と一緒だね」。

 別の児童は、矢印の記号のところに「40」と「マイナス40」の数字を入れた時の車の動きを見て、「算数で習った線対称の動きだ」と言った。

 「自然と他の科目と結びつけて考えていたんですよね。子どもたちの『気づき』の過程を導いていく中で、私自身もたくさんの気づきを得ています」

 授業とともに、佐藤講師も成長していた。

 ◆プログラミング教育 コンピューターなどを使い、自分の意図を実現させるための道筋を論理的に考えることができる「プログラミング的思考」を養う。文部科学省は、算数では筆算を解く手順を確実にこなすなど、各教科に関連づけて育成することを求めている。小学校段階では、プログラミング言語や入力手順を覚えることが目的ではなく、身近な生活でコンピューターが活用されていることや、問題解決には必要な手順があることに気付かせる。2020年度からの新学習指導要領導入に伴い、小学校で必修化される。

=2017/06/04付 西日本新聞朝刊(教育面)=

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