小さな赤ちゃんに小さなおむつ 世界最小 800グラムまでの低体重児用開発

西日本新聞

■増える選択肢 「親たちの心の支えに」

 手のひらにすっぽりと収まる、小さな小さなおむつ。家庭用品大手プロクター・アンド・ギャンブル・ジャパン(P&G、神戸市)の乳幼児用紙おむつブランド「パンパース」にこのほど、体重800グラムまでを対象とした、世界最小の紙おむつが登場した。採算の問題もあり、小さな赤ちゃんに合うおむつはなかなかなかったが、各メーカーは少しずつ目を向け始めている。新生児集中治療室(NICU)での選択肢が増えると同時に、不安を抱える親たちに心強いメッセージとなっている。

 同社が開発した「パンパースのはじめての肌へのいちばん P-3」は体重が500~800グラムの赤ちゃん用。3千グラム前後を基準とした新生児用と比べると4分の1ほどの大きさだ。日本と米国のNICU向けに、販売を始めた。

 P-3を開発したきっかけは、病院を回る同社の営業担当が「もっと小さいサイズのおむつが欲しい」との声を聞いたことだった。さらに、昨年8月にカナダで開かれた「国際新生児看護協会」の会議で看護師にインタビューした際も、同様の声が寄せられた。赤ちゃんに刺激を与えないように、体をあまり動かさずに替えられる構造で、負担の少ない肌触りを重視した。

 厚生労働省は2500グラム未満で生まれた赤ちゃんを「低出生体重児」と定義。うち、1500グラム未満を「極低出生体重児」、千グラム未満を「超低出生体重児」としている。同省の人口動態統計によると、2015年に生まれた赤ちゃん約100万人のうち、千グラム未満は3084人。さらにそのうち500グラム未満は321人で、05年と比べてもほぼ変わらない。メーカーにとっては対象者が少なく、採算が取れにくい。P&Gの広報担当者は「売り上げではなく社会的意義を重視した」と説明する。

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 小さく生まれた赤ちゃんと家族の会「Nっ子ネットワーク カンガルーの親子」(福岡県筑紫野市)の登山万佐子代表(47)は、その紙おむつを見た瞬間、歓声を上げた。「こんなに小さいサイズができるなんて」

 登山さんは06年に長女綾美ちゃん(10)を出産。在胎週数は23週と1日。体重は452グラム、身長26・8センチだった。その大きさを再現した人形にP-3をはかせてみるとぴったりだった。「その子に合ったサイズのおむつがあるということは、親たちの心の支えになる」。そう語る背景には、自身の体験があった。

 NICUの保育器の中で育てられた綾美ちゃんは、ある程度の大きさになるまで「お尻丸出しの状態だった」。登山さんが持参した尿漏れパッドを下に敷いていたが、ある時、看護師がガーゼを使っておむつ風に尻をくるんでくれていた。ペンでアンパンマンのイラストも手描きされていた。その姿を見た瞬間、登山さんは緊張が緩んだという。

 「おむつは赤ちゃんの象徴。わが子のおむつ姿を初めて目にして『ああ、この子は赤ちゃんなんだ、私はお母さんなんだ』と実感が湧き、不安な日々の中で救われた」と振り返る。低出生体重児の母親は臨月を経験した人も少なく、実感が湧かなかったり現状を受け止められなかったりする人もいるという。

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 九州大学病院総合周産期母子医療センター(福岡市)の病棟主任・落合正行医師(43)は、医療現場での低出生体重児用紙おむつ使用について「それぞれの状態に合ったものを選ぶ必要がある」と指摘する。特に体重が千グラムを切る赤ちゃんは皮膚がとても弱い。保育器は高温多湿でおむつかぶれにも注意が必要なため、尻を覆わない方がいい子もいるという。

 最近、千グラム未満児用のおむつや敷くだけのフラットタイプなど、小さい赤ちゃんが使える商品が増えている。落合医師は「少子化でメーカーも低出生体重児にスポットを当てるようになったのではないか。小さく生まれた子にも選択肢が増えている」と話している。


=2017/06/06付 西日本新聞朝刊=

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