【日日是好日】共存 教えてくれる生き物 羅漢寺次期住職 太田英華

西日本新聞

 岩肌を覆い隠すように群生する岩煙草(いわたばこ)。生き生きとした葉は仏様の台座。「おいしそうな葉ですね」と言われた参拝者。実はこの若葉、食用また胃腸薬に。門前町の川に蛍(ほたる)が戻ってきました。ラガーマン松崎さんが川をきれいにしてくれたおかげ。自然や生き物は正直です。

 羅漢寺はさまざまな生き物と共存しております。1年半ぐらい前に突然現れた猫。放浪癖のあるこの猫、実は麓の檀家(だんか)さんの猫でなぜか居候。しかし突然3カ月ほど姿を消し、今年の冬の終わり連れと共に戻ってきました。しかも連れはおなかが大きい。この猫、今まで餌を無心したことがないのに連れのために餌を催促し、連れを呼ぶ。

 受付担当の古株になった梶原さんが「きっと夫婦ですね」と。春間近、おなかがぺちゃんこになった連れの猫。しかし仔猫(こねこ)はどこに。しばらくかいがいしく放浪癖の猫は、連れを見守っていたかと思うとまたいなくなり、代って仔猫が3匹出現。よく見ると中に放浪癖の猫そっくりの仔が。やっぱり。現在連れの母猫は子育て奮闘中。狩りを教えたり、自分の尻尾で仔猫をあやしたり、私に近づいては、仔猫に手を出すなと言わんばかりの迫力で脅す。安全を確認し仔猫を連れてくる。放浪猫の父も母猫も素晴らしいと感動するばかり。

 出家する以前、東京で私は3匹の犬と生活をしており、彼らもまた羅漢寺に来ました。激動の私の人生を共に歩いた仲間。1匹は16歳で3年前に亡くなり、残り2匹も先月末に1匹、そしてその1週間後に1匹が亡くなりました。共に13歳。最後の数カ月1匹は徘徊(はいかい)し、1匹は寝たきりに。最後に亡くなった犬はオスで、寝たきりになって2カ月。持病があり、何度も生死をさまよい生還。最後は全てを見届けるように。

 彼が息を引き取った夜中、突然あの放浪父猫が現れました。最後の彼に会いにきたのか。花や好きな食べ物いっぱいに入れた彼の棺(ひつぎ)を抱き山を下りるとき母猫と仔猫3匹が来て、母猫は鳴きながら追ってくる。皆「さよなら」を言っている。山のカラスも普段見ないフクロウも現れ、最後は黄金色の貂(てん)まで。10年この山の動物たちのボスだったのだと、最後に小さい体の彼に「守ってくれてありがとう」。

 人間は動物を飼っていると思いがち、しかし実は守られており、そして大切なことを教えてくれる。彼らは私たちが気付いていないだけでちゃんと共存している。禅語の「不立文字(ふりゅうもんじ)」という言葉。存在するもの全てが真実を語り告げている。言(こと)あげする必要がない。花も動物も自己が存在する体験を一生懸命語っている。向き合い触れ合えば必ず感動の宝、教えを得る。

 無邪気に遊ぶ今を生きる3匹の仔猫を見、先に逝った彼ら(3匹の犬)のメッセージを爽やかな風と共に感じました。

 【略歴】1967年、羅漢寺27代住職の娘として生まれる。高校卒業後、大学進学のため上京。20代半ばから40歳で出家するまでフラメンコダンサーとして活動。出家後、愛知県の尼僧専門修行道場で約5年間、僧堂修行し、2013年3月に帰山。現在羅漢寺28代次期住職として寺を守る。


=2017/06/11付 西日本新聞朝刊=

大分県の天気予報

PR

大分 アクセスランキング

PR

注目のテーマ