全国ろうあ者大会 差別的対応は日常の中に 情報が伝わらない疎外感 「不自由ない環境を」…願いは重く

西日本新聞

 自分が「少数派」になる不安と疎外感が身に染みた。周りの人たちが話していることがまったく理解できないし、話し掛けても質問を理解してもらえない。

 今月上旬、聴覚障害者や支援者など約4200人が参加して、福岡市で開かれた「全国ろうあ者大会」。会場の「標準語」は手話だ。もちろん、講演や分科会では手話だけでなく、音声通訳や要約筆記などで情報提供されていたので、私も理解はできた。だが、聴覚障害のある参加者に話を聞こうとすると、手話ができなければ取材はままならない。
 私が感じた不安や疎外感は、いざ会場を出れば、聴覚障害がある人たちが日常的に感じているもののはず。それがどれだけつらいものかに気付いて、がくぜんとした。

 「聴覚障害者の筆談希望を無視し、口話だけで話し続ける」「学校の授業や職場の会議に手話通訳者や要約筆記をつけない」「バスや電車などで、車内放送を音声だけで流す」「病院などで順番待ちをしている聴覚障害者を音声だけで呼び出す」…。

 「権利(人権)」をテーマにした分科会で、聴覚障害者が体験した差別的対応の事例が紹介された。全日本ろうあ連盟(東京)が2014年9月~16年3月、全国811人に実施したアンケートによると、87%が差別的対応を経験したという。しかも、5人に1人は、就労、医療機関、教育、交通機関、公共施設など五つ以上の生活場面で経験しており、差別的対応は日常生活全般に潜んでいる。

 また、昨年4月施行の障害者差別解消法が定める「合理的配慮」を具体的に求めた人は、62%に上った。(1)学校や職場での通訳者の配置(2)公共交通機関の事故情報など文字による情報提供(3)医療機関や公共施設の職員の対応改善-が挙がった。

 報告した同連盟福祉・労働委員会の岩山誠さんは、通訳者派遣制度の充実、合理的配慮の提供にかかる費用の公的助成制度などが必要だと訴えた。連盟はその手段として、手話教育や手話通訳を充実させ、聴覚障害者が手話をあらゆる場面で使えるようにする手話言語法・条例の制定を求めている。

 同連盟によると、九州で手話言語条例を定めているのは4月現在、佐賀県嬉野市や福岡県直方市など6市だけ。全国大会実行委員長を務めた福岡県聴覚障害者協会理事長の大沢五恵さん(63)=北九州市若松区=は「私たちの手話は命そのもの。大会を機に、手話や聴覚障害者への理解が広まってほしい」と期待する。

 例えば、国が認定する手話通訳士は現在、全国で3516人。九州では267人、最も多い福岡県でも119人にとどまる。国は28年前の認定試験開始に当たり、公的機関などで働く通訳士の目標を4千人(聴覚障害者100人に1人)と掲げた。ところが、全国手話通訳問題研究会(京都)の調査では2015年、自治体や教育機関、公立病院などで雇用されている手話通訳者は1801人(うち手話通訳士53・7%)と、4千人の半分に満たない。

 他に、都道府県認定の手話通訳者、市町村認定の手話奉仕員もいる。それでも、子どもの入学式や授業参観など、聴覚障害のある保護者が手話通訳の派遣を望むような行事が重なると、数が不足するという。

 大沢さん自身、区役所で詳しい説明を求めてもスムーズに対応してもらえない、JRの駅でダイヤが乱れても何が起こっているのか理解できない、という体験が今でも何度もある、と憤る。「不便だけど、不自由のない環境を」。大沢さんの願いを実現するため、何ができるか、自問した。


=2017/06/15付 西日本新聞朝刊=

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