いのち、未来-海と生きる 「森里海を結ぶ」シリーズ2冊 人と自然の再生 思い込めた25編

西日本新聞

 有明海をはじめ沿岸の環境悪化の要因は、河川流域の森と海が、人間の暮らしや産業活動により分断されてしまったことにある。そんな見方から生まれた学問が「森里海(もりさとうみ)連環学」だ。提唱者の京都大名誉教授、田中克(まさる)さん(74)ら3人が編者を務めた書籍2冊が刊行された。流域住民の暮らしや川との関わりを見つめ直す体験や研究、思いについて、多彩な執筆者がつづった25編を収めた。

 「森里海を結ぶ」シリーズ(1)(2)と位置づけられた「いのちのふるさと海と生きる」と「女性が拓(ひら)くいのちのふるさと海と生きる未来」。

 「いのちのふるさと海と生きる」は水産学や土木工学の研究者ら男性13人・団体が執筆を担当した。

 宮城県気仙沼市の養殖業者でNPO法人「森は海の恋人」の畠山重篤理事長が、森を守ることで海の恵みを育ててきた運動や、東日本大震災後の復興への取り組みなどを紹介。佐賀大生らで組織する団体「有明海塾」も、干潟の保護などに取り組んだ活動を報告した。自身、有明海再生を目指すNPO法人の理事長代行も務める田中さんは、森里海連環学誕生の経緯に触れ「目指すところは、人と自然それぞれのつながりと、それを見直す価値観を再生すること」と記した。

 環境省は2014年、連環学の精神の普及を目指し「つなげよう、支えよう森里川海プロジェクト」をスタート。各地でシンポジウムなどを催している。環境省の中井徳太郎副チーム長は目指す社会の在り方を「森里川海の自然資本をきちんと管理し、維持してつなげ循環させ、与えられる恵みを喜びも含めて味わっていく社会」と描いた。

 筆者12人が全員女性の「女性が拓くいのちのふるさと海と生きる未来」では、佐賀県鹿島市で育った映像ディレクターの井手洋子さんが古里のノリ漁師を取材した経験を執筆。NPO法人環境市民(京都市)理事の下村委津子(しづこ)さんは、海外では、乱獲や環境破壊なしに漁獲された水産物であることを認証する「海のエコラベル」が普及している事情を報告。消費者が、例えばラベル付き商品を選ぶことで「誰でも買い物という手段で課題を解決する活動に参加できる」と記した。

 田中さんは「壊れた自然の修復には、未来に続く世代の幸せを最も大切にする社会が求められる。そのためには水やいのちの循環の大本である海からの視点が必要。2冊の提言を併せて読んでもらえれば、進むべき道の手掛かりが見つかるのではないか」と話した。

      *

 「いのち-」はA5判274ページ、花乱社(福岡市)=092(781)7550。「女性-」はA5判292ページ、昭和堂(京都市)=075(706)8818。価格はいずれも1800円(税別)。


=2017/06/21付 西日本新聞朝刊=

PR

くらし アクセスランキング

PR

注目のテーマ