森へおいでよ 筑豊の自然再発見<39>クスノキ 香りで探る、樟脳の木

西日本新聞

 観察会ではよく「この木は何ですか?」と尋ねられる。もしその木がクスノキならば、名前を明かす前に、葉を少しもんでその子供たちの鼻に近づけてみる。恐る恐る匂いを嗅いだ彼らは「おっ!」という顔をする。爽快感のあるよい香りだが、鼻につんとくる印象が線香のそれに通じるのか、「仏壇の匂い」などと面白い表現をする子もいた。

 さて、この独特の香りの正体は「樟脳(しょうのう)(カンフル)」。葉や材のチップを水蒸気蒸留することで抽出され、よく知られるところの防虫剤のほかにも外用医薬品などの成分として使われる。またセルロイドの原料でもあり、かつては日本の重要な輸出品であった。その後、合成樟脳などの出現で天然樟脳の生産量は減り、作る人も減少。工場も次々閉鎖された中で、江戸時代から天然樟脳を作り続けている工場がこの福岡県に残る。自然のものを求める人々の支持は、静かであるが根強い。

 葉の三行脈(さんこうみゃく)(1)とその基部にあるダニ室=写真(2)、縦に割れ目がある樹皮=写真(3)、こんもりとした樹形=写真(4)など、クスノキには香り以外にも比較的わかりやすい特徴がある。また、寿命が長く巨木に育つのも大きな特徴である。実際に今、全樹種含めて日本一の巨木とされるのは鹿児島県姶良市(旧蒲生町)の蒲生八幡神社にある推定樹齢1500年のクスノキで、その幹周は24・22メートルという。しかし、太さはそれには及ばずとも、心引かれる大きなクスノキなら遠くに行かなくても会える。

 例えば大分八幡宮(飯塚市大分=旧筑穂町)のご神木である大クス(県指定天然記念物)など、人々を見守るように大きく枝を広げるクスノキが身近なところにあるのではないだろうか。温暖な場所が好きなクスノキにとって、筑豊は住みやすい場所。里山にも自生したクスノキは多い。

 クスノキと名を明かすと、子供たちは「トトロの木だ!」とうれしそうに言う。あの森に行けるのならば、覚えたての樟脳の匂いをみんなで確かめてみたいものである。

【筑豊の自然を楽しむ会(ちくぜんらく)・後藤ようこ(もり子)】


=2017/06/22付 西日本新聞朝刊(筑豊版)=

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