在宅療養児 外出楽しんで おすすめ130施設紹介 看護大などマップ作成 「成長の源は経験」

西日本新聞

 自宅で医療的なケアが必要な「在宅療養児」に外出を楽しんでもらおうと、福岡県古賀市の福岡療育支援センターいちばん星と福岡女学院看護大のグループが、県内の施設をまとめた「おでかけマップ」を作成した。子どもたちの保護者に実際に出掛けて楽しかった場所を聞き取ってマップに反映させた。「成長の源は経験。世界はもっと広いんだよと伝えたい」。優しいまなざしを送る。

 A4判、68ページの冊子で、保護者約100人に調査して約130施設を選び、遊び場編、レストラン編、入浴編に分けて紹介。車いすで入れるトイレや医療機器をつなげるコンセントがある店、刻み食に対応する飲食店などきめ細かな情報も載せた。

 厚生労働省などによると、低体重や先天性異常で生まれた子の救命率上昇に伴い、人工呼吸器やたん吸引器など医療的なケアが必要な子どもたちは全国に1万7千人(2015年度)と推計される。

 その一方で、外出できる場所は限られる上、保護者もアクシデントを心配して外出を控えがち。マップ作成は、同大の酒井康江准教授がいちばん星の訪問看護に同行し、実情を目の当たりにしたのがきっかけだった。いちばん星の山下郁代訪問看護師は「外出が増えることで、在宅療養児への理解にもつながってほしい」と話している。

 マップは在宅療養児に無料で配布する。福岡女学院看護大の酒井准教授=092(943)4174。

 ●医療器持参、移動に負担 バギー型車いす 総重量65キロに 少しの階段でも“高い壁”

 「外出を諦めることは日常茶飯事です」。福岡県古賀市の広田愛さん(38)は、全身の筋力が低下していく脊髄性筋萎縮症の琉花(るか)さん(8)を自宅で育てる日々をそう語る。

 話すことができず、五十音の文字が並ぶ意志伝達装置が必需品。少しだけ指先が動き、1文字ずつ順番に赤く光り、選びたい文字が光ったタイミングでボタンを押す。「お母さんが外出時によく忘れる物は」と質問すると「は み が き」。30秒後に返ってきた。

 映画鑑賞や音楽が大好き。ただ、普段から人工呼吸器、たんの吸引器のほか、唾液を吸引したり、心拍数を測定したりする機器も手放せない。さらに外出時には、緊急時の酸素ボンベも持参する必要がある。体重は16キロ。バギー型の車いすに必要な機器を積み込むと、計65キロになる。

 愛さんが外出先の施設を選ぶ際に重視するのは、車いすで通れるスロープの有無。65キロの車いすではちょっとした段差も越えるのがやっとで「2、3段の階段があると諦めてしまう」。雨の日は機器が故障しないよう、駐車場から施設に続く屋根も欠かせない。

 琉花さんのように、首や腰が安定しない子どもが使うバギー型車いすの認知度も低い。琉花さん用は幅60センチ、奥行き120センチ。ただ、小さい一般の車いすと混同されることも多く、事前にエレベーターが使用できると確認しても、実際は狭かった場合もあるという。体が成長すれば車いすのサイズも大きくなり、愛さんは「行ける所が少なくなりそう」と心配している。

 昨年4月に施行された障害者差別解消法は、企業や店舗にもハンディのある人が困らないよう「合理的配慮」を求める。岡山大大学院の吉利宗久准教授(特別支援教育)は「通路から物を撤去するなど、すぐできることも多い。当事者の要望に耳を傾け、配慮を積み重ねることが大切だ」と指摘する。


=2017/06/26付 西日本新聞朝刊=

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