総合的な学習(1)人づくり 地域の現場が「教科書」

西日本新聞

 ふるさとの何げない魅力や豊かさに目を向け、振興や再生に向かう地域がある。

 九州では、大分県の一村一品運動などが知られる。ひなびた温泉や農村風景、朝霧に着目した湯布院(同県由布市)は今や、全国有数のリゾート地へと成長した。四国では、南天やモミジなどの葉っぱを料理の彩りに生かす「葉っぱビジネス」(徳島県上勝(かみかつ)町)。東北には、極寒を逆手に取った「地吹雪体験ツアー」(青森県の津軽半島)なんて取り組みもある。いずれの地域づくり運動にも、ふるさとの魅力に気づき、行動へと動いた「人」がいた。

 大分県佐伯市の市立鶴谷(つるや)中学校が取り組む「総合的な学習の時間」(総合学習)の狙いは、まさにその次代の人づくりにあるようだった。

 3年継続授業で「提言」へ

 総合学習に教科書はなく、多くの学校は地域に学ぶ。生徒たちは、地元の歴史や自然、産業についてグループで調査、発表、感想文を書いて終わるのが通例だ。そんな中、鶴谷中では前年度から、3年継続の学習プログラムに取り組む。

 「地域ではどんな働く人がいるのか」(1年生)▽「産業構造はどうなっているのか」(2年生)▽「私たちに何ができるか」(3年生)

 単なる「調べ学習」にとどまらず、市への具体的な提言まで踏み込もうとしている。

 2年生を対象にした一連の総合学習は、6月12日から本格化した。4クラスの生徒たちは、それぞれ4人程度の班を結成。観光、福祉、水産業、歴史など7分野に分かれ、市職員などから現状説明を受けた。

 「食文化」の教室で、講師を務めたのは市まちづくり推進課の柴田真佑(しんすけ)総括主幹(49)。「佐伯を代表する海の魚は?」「食べる前の、いただきます。誰に言っているのかな?」「あつめしやゴマダシ、って知ってるかな? 地域の伝統食だよね。これって、どれほどの年月をへて受け継がれたものだろう」

 「地域づくりは人づくり。人は食によって育まれ、食は命の、いただきます」。柴田さんは、そんな話を熱っぽく語り、地域を「知る」ことばかりではなく、「作る」「伝える」の大切さを語った。なるほど、伝統食の継承と言えば難しそうだが、中学生自らが料理を作ってみるだけで、楽しく、受け継がれる。

 食育やキャリア(職業観)教育にもつながる授業だった。

 次代の担い手育てる

「何をすればいいの? というのが本音でしたね」。総合学習の導入が始まった約20年前を、同校の中浜和也主幹教諭(54)はそう打ち明けた。

 当初は体育祭や文化祭の練習や準備、地域のボランティア清掃などに充てていた。やがて「職場体験」として、生徒たちが希望する職業の現場に学ぶ授業も定着していったが…。

 「それはそれで、生徒たちに意味のあることなんだけど、感想文を書くだけで終わってしまう。せっかくやるなら、地域の人も巻き込み、もっと面白い授業にできないか」

 3年継続の総合学習プログラムは、そんな教諭たちの自省から生まれたという。

 2年生は6月の授業を受け、1学期はグループ研究を進めている。図書館やインターネットで情報を集め、疑問があれば市担当者に再質問、現場の当事者にも会って話を聞く。2学期には京都への修学旅行があり、そこでの学びや比較検討も含め、提言に生かしていく考えだ。

 「教科の枠を超えて、地域の中には、問題解決に向けたいろんな情報や発想のヒントがある。生徒たちにとって、総合学習はそんな学びの引き出しを増やしていく機会になると思う。本当は、生徒自らが課題を決め、探究していく授業が面白いんですけどね」(中浜教諭)

 「地域」というもう一つの教科書を使った総合学習。手づくりの授業を受けた生徒たちがこれからどう育っていくのか、あれこれ考える。

 ◆総合的な学習の時間 完全学校週5日制が導入された2002年度から、小中高校で実施されている。学習指導要領では、児童生徒が「自ら学び自ら考える教育」を目指し、他教科や実生活と関連付け、体験学習や問題解決型の学習を実践するよう求めている。小学校では3年生以上が週2こま(年間70時間)▽中学校では1年生が週1・5こま(50時間)、2・3年生が週2こま(70時間)の授業で学んでいる。ただ、学習内容の増加や学校行事などに伴い、学校裁量で授業時間数が削られる傾向にもあり、授業のあり方が問われている。

=2017/07/02付 西日本新聞朝刊(教育面)=

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