今天中国~中国のいま(44) バナナと自由の「味」

西日本新聞

 香港人を「バナナ」に例える言い方があるという。地元の人の話によると、人種的には肌は黄色いが、一皮むくと白人のよう。つまり見た目は本土と同じ中国人でも、150年余り続いた英国統治の結果、中身は西洋風の価値観に染まっているという意味らしい。

 やや否定的な意味合いで使う場合もあるようだが、確かに自由や人権といった価値観は浸透している。

 香港では中学校から、地元の広東語だけでなく、英語、普通語(北京語)の学校も選択できる。英語の学校に通った会社員女性(27)は、歴史の授業では西洋史を多く学んだ記憶があるという。「中国史も勉強したけど、アヘン戦争や過去100年の歴史にはあまり時間をかけなかった」

 こうした現状を疑問視する向きがある。英国の影響が今も残る教育が若者の「中国離れ」を促し、香港独立など急進的な動きを生んでいる、というわけだ。1日の返還20年記念式典で、中国の習近平国家主席が「愛国主義教育の強化」を唱えたのも、そうした問題意識の延長線上にある。

 なるほど、英国に不都合なことは教えていなかったのかもしれない。植民地支配の「負の遺産」と言われれば、その通りだろう。

 ただ、自由や人権は今や普遍的な価値観であり、それを前提に香港社会は形成されている。愛国教育が「中国を愛せ」と無理強いするような内容なら、むしろ逆効果ではないか。

 中国政府は経済面で懐柔する構えのようだが、実利が好きな親中派の人々もしたたかであり、自由を味わって生きている。何しろ、香港人は「バナナ」なのだから。 (北京・相本康一)

 =随時掲載

=2017/07/06付 西日本新聞朝刊=

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