40歳以上、10年で倍増 看護系学校の入学者 年齢重ねて看護師の道へ 自立目指し/人生経験生かせる/誰かの助けに

西日本新聞

 年を重ねてから、看護師の資格取得を目指す人が増えている。全国の看護系大学や専門学校に入学した40歳以上の人は、2006年の698人から16年には1384人にほぼ倍増(厚生労働省調べ)。子育てが一段落して経済的自立を目指す女性が多い。団塊の世代がすべて75歳以上となる25年には深刻な看護師不足が懸念され、少子化で若い世代が先細る中、医療現場の期待も高い。

 福岡市早良区の市医師会看護専門学校に4月に入学した楢崎典子さん(52)=中央区=は、新入生256人の最年長だった。ちょうど今春、2人の息子もそれぞれ大学と高校に進んだ。

 きっかけは、昨年暮れに偶然会った看護師の友人から「准看護師の資格を取ったら?」と勧められたこと。2年前に離婚し、続けていたパート勤務では収入面で不安があった。

 早速、資料を取り寄せた。受験科目は中学卒業程度という国語、数学と小論文。試験までは1カ月しかない。「でもまだ1カ月もあると考えて、数学は息子に教わりながら」過去問題を解きまくり、2月、無事に合格通知を手にした。

 2年後の卒業時は54歳。それでも10代の同級生にはない人生経験を生かせるはずだと思う。「患者に寄り添う看護師になりたいです」。失業手当と貯蓄で暮らしをやりくりしながら試験や課題の提出をこなす。

    ◇      ◇

 遠藤美佳さん(44)=早良区=は、春から正看護師としての一歩を踏み出した。市内の病院の回復期リハビリテーション病棟で働く。急性期を脱した患者の機能回復訓練に当たる職場だ。

 短大卒業後、20歳で結婚。3人の子育てをしながらパートなどの仕事を続けた。実家では長年、母親が祖母を介護する姿を見てきた。40歳の節目を控え「私もこれからの人生は誰かの助けになりたい」と再スタートを切る決心をした。

 佐賀市内の専門学校の准看護科に入学し、直後に離婚。同じシングルマザーの級友と励まし合いながら週3日の授業に通った。それ以外の日は整形外科の看護助手として働いた。子どもたちはアルバイトをして応援してくれた。自治体のひとり親支援策「高等職業訓練促進給付金」も家計の助けになったという。卒業後さらに福岡市内の専門学校に進み、今春、正看護師の国家試験を突破した。

 「若い頃と比べると記憶力が落ちて勉強は大変だし、病院での実習は本当に厳しかった。でも夢に近づいていると思うと頑張れました」と振り返る。

 福岡のクリニックで准看護師として勤めていた頃に比べ手取り収入は倍増した。「国家資格が自分の支えになり、老後の不安がなくなった」と話す。

    ◇      ◇

 人の命に関わる看護師は夜勤など肉体的な負担も重いが、高齢社会で需要はますます高まっている。25年には最大で13万人の看護職員が不足すると厚労省は試算している。

 日本医師会常任理事の釜萢(かまやち)敏さんは「この資格は確実な就職に結び付き、収入も安定している。今後は介護施設や訪問看護の需要も増える。人生経験が豊富な人は、厳しい現場で働く人たちの緩衝材にもなってくれるのではないか」と期待する。

 市医師会看護専門学校の副校長、平野真利子さんは「年を重ねて看護師を目指す人たちは目標が明確で人一倍努力する。困難も多いでしょうが、諦めないでほしい」とエールを送った。


=2017/07/08付 西日本新聞朝刊=

PR

くらし アクセスランキング

PR

注目のテーマ