【ママも議員や社長の時代】 松田 美幸さん

西日本新聞

◆議会こそ働き方改革を

 東京都議選で妊娠中の女性2人が当選した。出馬を目指し公認を受ける準備中に妊娠が分かり、悩みながらも家族の支援を得て選挙に臨んだ候補に、批判や否定的な声が上がった。「出産で休むことが前提の出馬は無責任」「過酷な業務は本人やおなかの子どもに良くない」といった意見は、第三者が言うまでもなく、当事者もそうした葛藤を乗り越えてなお大変な選択をしたのではないだろうか。誰もが働きながら子どもを産み育てられる日本にするために、妊娠した女性も議員候補になれるように環境を整える方向に向かってほしい。

 議員は被雇用者ではないので、産前・産後休業や、育児休業の制度は適用されないが、出産については、衆参両院でも都道府県議会でも、疾病や公務と並んで議会欠席の理由として明記されている。ただ、議員の場合、欠席しても議員報酬は減額されず、議会を休んで報酬を得ているのはおかしいと批判の対象になりやすい。しかし、本人の病気や事故、公務の他、家族の介護、出産や育児など、議会を欠席せざるを得ない事態はありうる。本人が議員報酬の減額や返納を希望しても、そうできる制度がない状況で、ママ議員やパパ議員だけを批判するのは的外れではないか。

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 猛暑や酷寒の中、朝から夜まで走り回る典型的な選挙運動のスタイルは体力と時間の勝負だ。運動の手法は人それぞれとはいえ、身体的にも精神的にも頑強な人しか議員になれないとしたら、多様な視点に基づいた議論は望めないし、弱い立場の声を誰が代弁してくれるのだろう。

 先の国会で性犯罪の厳罰化を盛り込んだ刑法の一部改正法がやっと成立した。女性に選挙権も被選挙権もなかった110年前に制定された法律が改正され、性暴力被害問題の解決に向けようやくスタートラインに立てたわけだが、国際人権基準からはまだ遅れている。性犯罪被害者は圧倒的に女性が多いことを勘案すれば、議会における女性参画はますます重要である。日本の政治分野における女性参画の現状は、世界でも最低レベルにあるにもかかわらず、先の国会で一時は成立の機運があった政治分野における男女共同参画推進法案は、残念ながら成立に至らなかった。

 働き方改革を国の最重要課題に掲げる日本で、議会こそがそのモデルになって、多様な人材が活躍できる社会づくりをリードしてはどうだろう。地方議会でも議事が深夜に及ぶことがあるが、議員の働き方改革が進めば行政機関の職員の長時間労働も大幅に改善すると期待され、女性も活躍しやすくなるはずだ。

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 福岡県男女共同参画センターは、県内の市町村や地域の女性団体と連携して、地域課題の解決に取り組む女性リーダー育成事業を推進している。「元気塾」と呼ぶこの事業では、地域の子育てママたちが新しいタイプの担い手として頭角を現している。フルタイムで雇用される働き方ではなく、人的ネットワークやインターネット環境、パソコンなど情報機器を駆使し、いつでもどこでも働けるママたちが、得意なスキルを組み合わせ、セミナー講師、ものづくりやカフェ経営などの仕事をしながら、子育てだけでなく地域活動にも積極的だ。

 子どもが生まれて、さまざまな社会の問題に気づいた若いママたちは、子どもたちに明るい未来をつなぐため、自ら学習会を開き、課題解決に向け自治体との協働の取り組みを企画運営する。「社会にないのなら、自分たちでつくろう」と、NPOや会社を設立するなどして社会にインパクトを与えていく。そんな子育てママのパワーを生かせるよう、社会が変わる時だ。

 【略歴】1958年、津市生まれ。三重大教育学部卒、米イリノイ大経営学修士(MBA)。2015年6月から現職。福岡女子大学学長特別補佐、福岡地域戦略推進協議会シニアフェロー、OCHIホールディングス(株)社外取締役も務める。


=2017/07/09付 西日本新聞朝刊=

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