広がれ ヘアドネーションの輪 髪を失った子にウィッグを 小学生も提供/制作に時間

西日本新聞

 暑い季節。ロングヘアをうっとうしく感じたなら、病気で髪を失った子どもたちのために「ヘアドネーション」(髪の寄付)をしてみてはどうだろう。大人も子どもも簡単にできるボランティアとして急速な広がりを見せている。

 7月初旬。福岡県宗像市の美容室「アトリエ・Shin」の鏡の前に座っていたのは福岡市西区の小学4年、朝井陽子さん(10)。美容師の早田智佳さん(48)が背中まで伸びた髪を五つの束に分け、ジョキジョキと切っていく。

 髪を寄付できることは母親の美穂さんが教えた。「私の母が昨年乳がんになったこともあり、自分も役立ちたいと思ったようです」

 ショートボブに変身した陽子さんは「普通に髪を切るのと同じだったけど、病気の人の役に立ててよかった」とはにかんだ。

 髪は店から大阪市のNPO法人「ジャパンヘアドネーション&チャリティー」(JHDAC)に送られ、無毛症や小児がんの抗がん剤治療で髪を失った18歳以下の子どもの医療用ウィッグ(かつら)に生まれ変わる。

 寄付する髪の長さは31センチ以上が原則。20~30人分で一つのウィッグができる。白髪や染めた髪、パーマヘアも問題ないが、特に不足がちなのは50センチ以上の髪。「脱毛に悩む女の子は長い髪への憧れが強く、ほとんどがロングを希望する」と、宮崎県出身で代表を務める渡辺貴一さん(46)。

 寄付する場合、手軽なのは、活動に協力する「賛同サロン」を利用する方法だ。早田さんの美容室もその一つで、毎月10人前後が寄付する。最近は小学生などの子どもが半数ほどを占める。「自分は髪が短いので無理だけど」という母親に勧められたケースも多いという。

 こうした賛同サロンは九州だけで150あり、JHDACのホームページ(HP)で検索できる。仕上げのカットをしてもらうので通常の料金は必要になる。

 自宅や行きつけの店でカットして自分で送る場合は、HP記載の規定のカット方法を守ると良い。

 ヘアドネーションは1990年代に米国で普及。JHDACは一般の人から髪の寄付を募る日本初の団体として2009年に設立された。寄せられる髪の量はここ数年で急激に増え、最近は1日約200人分に上る。15年に柴咲コウさんや水野真紀さんといった有名女優による寄付が話題になったのを契機に、活動が広く知られるようになったこともあるという。

 問題もある。全てオーダーメードのウィッグは完成まで時間がかかり、制作費(一つ10万円前後)は賛同サロンに置いた募金箱やネットを通じた寄付で賄うため、制作できる数は限られている。これまで180人以上がウィッグを受け取ったが“順番待ち”も約170人おり、受け取りまで「2年待ち」の状況が続いているという。

 「さらさらで、全然きしまない」。5月、待望のウィッグを手にした福岡県岡垣町の女子高校生(16)は、人毛100%の触り心地に驚いた。

 生まれつき髪が少なく、中学2年からウィッグを使用しているが、価格が比較的安い人工毛が混じったものを使ってきた。それまでは「ハゲ」といじめられたこともあったという。

 たくさんの人の善意がこもったウィッグは宝物。「もったいないので、バイトの面接とか特別な時に使うつもりです」

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 問い合わせはJHDACのホームページからメールで。


=2017/07/22付 西日本新聞朝刊=

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