【日日是好日】自然の驚異を忘れない 羅漢寺次期住職 太田英華

西日本新聞

 遠くの山の上にできたばかりの入道雲が太陽に照らされてまぶしい真夏の大暑。夏の空はスイカと夏休みを思い出します。

 昼間の暑さも日没とともに一気に涼しく。夜風が涼しい本堂は大の字になって寝たい場所。池のカエルの大合唱も夏を演出するBGM。彼らが鳴くとむしろ落ち着きます。窓を開けると夜の風は心地よく、電気に飛んできた大きな雄のカブトムシに居候子猫が反応。彼らは現在狩を猛練習。最近の夏の星空は遠くに存在。子どもの頃、手を伸ばせば届きそうだった星。透明感のある夜空はいずこへ。

 何だか昔と変わってきた自然環境。地球が崩れそうな環境を一生懸命維持しようと頑張っている様子が目に浮かびます。いつもは心落ち着く自然も今回の豪雨では驚異の存在でした。降り続く雨、屋根が突き破られそう。本堂横の滝は、一気に今まで見たことがないくらいの水量に。雷は爆弾のように落ち、ちっぽけな私はなすすべもなくただ本堂に。自然の驚異に人間は無力。山から見る川は暴れているようにも、もがいているようにも。氾濫しないように一生懸命早く早く海へ。山も一生懸命雨を受け入れ、木々は根を張って山肌を守っている。「私たちが壊れると大変なことになるから」。山や川が叫んでいました。

 5年前の豪雨のときは名古屋で修行中。事の重大さを参禅者の方に知らされました。町が水に漬かった? どれだけの雨が降ったのだろうと想像もできませんでしたが、今回の豪雨で実感。怖かっただろう…。

 最近のゲリラ豪雨の影響か、羅漢寺の約30年前に造られた本堂前見晴らし台が危ない状況になりました。そこで今冬の終わりに計画を立てて見晴らし台改修工事を実行。今回より羅漢寺建築部門を担当してくださるのが、高校の同級生橋本君。まさかこのようなご縁になるとは思いもしませんでした。橋本君はとことん建物と向き合い、丁寧に対応してくれるありがたい救世主です。

 今から48年前、昭和18年に焼失した本堂を先代が再建。その際に用いた木は全てこの山や近隣の山の木。その土地の木を用いないとその環境に適さないもの。木は建物になっても生きています。橋本君が見晴らし台に選んだ木も近隣の杉で、腐りにくい中心の固い赤い部分を使用。加工するところも自身が環境を考え、いかに適合できるかを考えて完成させました。まさに木がここに生きています。

 新しい見晴らし台から眺める耶馬渓の山々。環境と調和するために私たちがやるべきことは? 自然と向き合うとき、自然の驚異を忘れないためにもここに立ちます。

 見晴らし台を支える新しい木に問いかけます。

 「君たちは長年育った山を守ってくれていたのだろうけど、これからは羅漢寺の山を守っておくれよ。この山をどんなことがあっても守っていくよ。一緒に」。合唱。

 【略歴】1967年、羅漢寺27代住職の娘として生まれる。高校卒業後、大学進学のため上京。20代半ばから40歳で出家するまでフラメンコダンサーとして活動。出家後、愛知県の尼僧専門修行道場で約5年間、僧堂修行し、2013年3月に帰山。現在羅漢寺28代次期住職として寺を守る。


=2017/07/23付 西日本新聞朝刊=

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