素早い動き ヒアリ すぐ通報を 博多港、大分・中津など発見相次ぐ 必要以上に怖がらないで 定着したら経済的打撃も

西日本新聞

 外来種の毒アリ「ヒアリ」が21日、九州で初めて福岡市の博多港で見つかり、25日には大分県中津市でも確認されるなど、九州でもヒアリの発見例が相次いでいる。24日に博多港・アイランドシティ(IC)コンテナターミナルの現場を視察したアリの研究者、九州大持続可能な社会のための決断科学センター(福岡市)の村上貴弘准教授(行動生態学)に話を聞いた。

 -現地の印象は。

 「私が見た限りでは、ターミナルからヒアリを出さないための対策がなかった。早急に、誘引剤で捕獲するわなを仕掛けたり、ベイト剤(毒入りの餌)を設置したりする必要がある」

 -ヒアリの特徴は。

 「南米原産だが、貿易の拡大で、米国や中国、台湾、オーストラリアなどに生息地を広げてきた。体長2・5~6ミリで全体的に赤茶色。ハチと同様に尻の毒針で刺し、昆虫やカエルを捕食する。人間が切り開いた草地や牧場、公園の芝生などを好み、ドーム状の巣、アリ塚(高さ15~50センチ)を作る」

 -刺されたらどうなる。

 「やけどのような痛みがあり、症状は体質で異なる。米国南部の各州では、住民の50~90%が刺された経験があり、うち1~2%がアナフィラキシー(急性アレルギー)ショックになったとの報告がある。呼吸困難、じんましん、低血圧などの症状だ。死者は推計50~100人とされる」

 「私自身、米国留学時代や調査に赴いたアルゼンチンなどで計90回ほど刺されたが、ほとんどは痛がゆい程度。ただ7年前に台湾での調査中、2カ所刺されたときは、吐き気や動悸(どうき)、手の震えなどの症状が出た。刺されたら傷口をすぐ水で洗い、30分ほど安静にすれば普通は大丈夫。問題はアレルギー症状が出たときで、その場合はすぐに病院へ行くことだ」

 -人的な被害以外にも害があるのか。

 「経済的損失は大きい。刺された子牛が死んだり作物を食べられたりする農畜産業の被害、さらに温かい所を好むため電気設備などに入り火災を招く例もある。米国では損害額が年間5千億円ともされ、オーストラリアの年間対策費は約15億円という。定着すると非常にやっかいだ」

 -なぜ貨物に紛れ込む。

 「アリたちは巣別れする春先、500個体ほどがまとまって引っ越す。温かく居心地が良いコンテナが、引っ越し先になることが少なくない。港のほか空港周辺も警戒した方がいい」

 -相次ぐ発見をどう見る。

 「日本の研究者は2008年に書籍『ヒアリの生物学』を刊行し警鐘を鳴らしてきた。5月に入るまで確認例がなかったのに、6、7月に各地で発見が相次いでいるのは異常なペース。中国での大繁殖などが想定される。広東省など南方からの荷物は要注意だ」

 -ヒアリの見分け方は。

 「体は胸部と腹部の間に二つのこぶがあり、触角の先が2段に膨らんでいる。ただ小さくてほとんど見えない。動きに特徴があり、日本の在来種より素早く、攻撃性が高いので近くにいると寄って来る。今回、最初に見つけた港湾関係者も『普通とは違う動きのアリがいる』と通報してくれた」

 -見つけたときは。

 「刺されないよう注意深く見て、すぐに環境省や地元自治体に通報してほしい。必要以上に怖がることはないので、冷静に対処してほしい。一方、人体に全く影響ない在来種のアリまでむやみに殺虫剤で殺すようなことは避けてほしい」

 「日本は今、定着を食い止められるかどうかの岐路にある。被害のない時期が続いた後、いったん入り込むと雪崩を打ったように広がるのが通例。40~50年のスパンで注視していく必要がある」

 ▼国の対策 環境省や国土交通省は、中国やオーストラリアから定期的にコンテナ船が到着する全国の68港で、生息調査や毒入りの餌による駆除に取り組む計画。


=2017/07/26付 西日本新聞朝刊=

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