今天中国~中国のいま(50) 「思春期の国」の将来

西日本新聞

 ついに、というべきか。中国・上海市に先月、24時間営業の無人コンビニエンスストアが登場した。ここでも活躍するのはスマートフォンである。

 報道によると、スマホのアプリ「微信(ウェイシン)」(英語名WeChat)で扉のQRコードを読み取ると、鍵が開いて入店できる。購入する際は商品をレジの機械に載せ、アプリで支払う。監視カメラに加え、微信で身元確認するので万引被害の心配はなく、人件費の抑制効果で運営コストは通常店の15%程度という。

 猛暑が続く中、店内が暑くなりすぎて一時閉店するなど試行錯誤のようだが、将来は5千カ所まで増やす計画らしい。

 微信の利用者は8億人以上。北京では現金を持たずにスマホで決済する生活が当たり前になった。スマホと連動したシェアリング自転車やタクシーも街にあふれている。ほんの3年前までは見られなかった光景だ。「自動化、省力化を目指し、製造業へのロボット導入も積極的だ」と専門家は話す。

 こんなエピソードを思い出した。清朝時代の19世紀末、10人ほどの工員によって機械印刷される英国の新聞社工場を見学した中国人官僚が「なぜ工員2千人以上を雇い、人力で印刷することで多くの人々の生活を保障しないのか」と質問した、という話だ。

 儒家思想に基づく相互扶助の考え方が背景にあったという。社会主義を看板に1949年に建国した今の中国も当初、営利主義とは無縁の計画経済が続いた。

 それが今や、弱肉強食の競争原理むき出しである。インターネットの普及、IT革命の波に乗って生活環境は激変し、「付いていけない」とこぼす人もいる。

 現代の日本人にとって中国のイメージは、大声を発しながら「爆買い」にいそしむ姿だろうか。あるいは「中華民族の偉大な復興」というスローガンを掲げて国際的な影響力を強める一方、言論を統制し、フェイスブックすら認めない閉鎖的な一党独裁への批判が頭に浮かぶかもしれない。大気汚染、貧富の格差…。キーワードは幾つもある。

 しかし、それらはこの広大な国の一断面にすぎず、素顔は実に多彩である。日本を嫌いな人がいれば、大好きな人もたくさんいる。共産党員も出稼ぎ者も、子どもの将来を案じている。良く言えばおおらか、悪く言えば大ざっぱな大陸気質の中からアイデアが生まれ、驚きのスピード感で社会が動く。

 中国メディアの友人は言う。「日本は成熟した大人。対して今の中国は、いわば思春期なのです」

 さまざまな顔を持つ「思春期の国」は、どこに向かうのか。先入観を脇に置いて、等身大の「今天(今の)中国」と向き合うことが、その行く末を考えるヒントになるはずだ。 (北京・相本康一)

 =おわり

=2017/07/27付 西日本新聞朝刊=

PR

連載 アクセスランキング

PR

注目のテーマ