人道支援 使途に危うさ 日本が整備費、シリアの発電所 空爆拠点に給電か

西日本新聞

 シリアのアサド政権軍が今月、化学兵器による空爆の拠点にしたとされる中部ホムス県のシャイラト空軍基地に、日本政府が整備資金を提供中の火力発電所が電力を供給していた可能性があることが、西日本新聞の取材で分かった。空爆では猛毒サリンが使われたとみられ、子どもを含め少なくとも87人が死亡。米軍が巡航ミサイルでこの基地を攻撃した。政府は「人道目的」として発電所を支援しているが、虐殺や国際紛争に間接的に関与している恐れが出てきた。

 政府が資金提供をしているのは「ジャンダール火力発電所」。シャイラト空軍基地の約10キロ西にある。ホムス県はアサド政権の支配地域だ。衛星画像で発電所から送電線や送電塔をたどると、空軍基地と結ばれているのが確認できる。

 国連開発計画(UNDP)シリア事務所によると、確認ができる範囲で同発電所は内戦が起きるまでホムス県全域の電力供給を担っていた。現在は全国発電量の25%以上を担っている。基地が送電先に含まれていたかについて同事務所は「分からない。配電先は特定していない」とした上で可能性を否定しなかった。

 西日本新聞は2015年12月、シリアでの政府の資金提供を報道し、アサド政権の支援になりかねないと問題点を指摘した。報道を受け、岸田文雄外相は同年12月8日の記者会見で「シリアの人々に電力を供給する緊急人道支援」と強調。その上で、軍事利用されないため「支援がどのように使われたか、わが国としては確認していくことは大事だ。人道支援が本来の趣旨に沿って行われることは大切だ」と述べていた。

 しかし今回、シャイラト空軍基地に電力を供給している可能性をただすと、外務省国別開発協力第3課は「(電力の)供給先を特定したものではない」と繰り返し、大臣発言にあった「確認」をしたのかも含めて答えなかった。

 発電所は、政府による約510億円の円借款で1996年に完成。シリアでは11年3月にアサド政権と反体制派の紛争が始まり、政府は民主党政権下の同年5月、アサド政権への「新規の経済協力は見合わせる」と表明し、安倍晋三政権も引き継いでいる。

 だが、発電所の補修のため、政府と国際協力機構(JICA)が15年以降も、UNDPによる補修整備事業費に計約22億円を提供。事業は17年末までに完了予定という。政府とUNDPは16年4月にも、さらに二つの発電所の再建に13億円を追加支援する合意書を交わした。基地への電力供給についてJICAも外務省と同じく「電力の供給先は特定していない」としている。

この記事は2017年04月24日付で、内容は当時のものです。

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