「先生、まだいたと?」と驚かれることも “城島のお母さん”保育士半世紀

西日本新聞

 福岡県久留米市城島町城島にある「城島保育園」。1952年創立で、旧三潴郡内で最も歴史の長いこの保育園には、名物園長がいる。保育士歴半世紀以上の大ベテラン、小野里江園長(72)。園児はもちろん、その親や祖父母まで3世代にわたってお世話になったという家族も多い。そんな“城島のお母さん”を訪ねてきた。

 「園庭の木は大切にしています。天然の木陰ができて、晴れの日もとても涼しいでしょう?」。クスノキやフジ、サクラなど20本以上の木に囲まれた園庭を眺めながら、小野さんはほほ笑んだ。遊具は木陰に置かれている。子どもたちが直射日光を受けずに遊べる上、遊具のそばにある木にも自然と接することができるため、虫や泥などを嫌がらなくなるのだという。

 現在、園児は5クラス約150人で、ほとんどが町内在住。親子で参加するマラソン大会(11月)や、祖父母を招いての団子づくり教室(5月)のほか、年数回の給食試食会など、年間を通してたくさんのイベントが企画されている。「普段は一緒に住んでいないおじいちゃんがわざわざ来てくれる家庭もありますよ」と小野さん。

 生まれも育ちも城島。三潴高を卒業後、城島保育園に就職し、働きながら保育士の資格を取得した。68年に当時の園長の息子と結婚したものの、73年に死別。夫に代わって義理の両親とともに園を切り盛りし、88年から園長を務めている。54年間で約3千人に上る子どもたちを送り出した。かつての教え子が親となり、園に来て「先生、まだいたと?」と驚かれることもあるという。

 園長の一日は多忙だ。共働き家庭のニーズに応えるため、朝は午前7時から子どもを預かり、夜は午後8時までお世話する。保護者にも積極的に話し掛け、各家庭の事情の把握と情報共有に努めることも忘れない。ある保護者は「先生は家族のことをよく知っているから、何でも気軽に相談できる。お母さんやおばあちゃんのような存在です」と全幅の信頼を寄せる。

 今は核家族化が進み、子育てを見て学ぶ機会も少ないためか、若い母親の中には子育てに不慣れな人もいるという。「あんた、そらおかしかろうもん」「自分が子どもの時、親御さんはどうしてくれよったね?」-。3世代にわたって見守り各家庭のことをよく知る小野さんだからこそ、はっきり注意ができる。

 しかし、小野さんも一般的にはとうに定年を超える年齢。首が据わったばかりの4カ月の乳児から就学前まで年齢に合わせた細心のケアに心を砕く毎日で、心身共にお疲れかと思いきや、「園で子どもと会うことが生活の一部。私にとっては自宅のようなもので、苦に感じたことはないですね」。

 2015年秋には血中の血小板が減少する指定難病「突発性血小板減少性紫斑病」を発症し、約1カ月入院した。投薬の影響で骨折し、現在も腰のコルセットは外せず、子どもを抱き上げることはできなくなった。それでも、掃除や飼育する魚のえさやりなど、休日でも園に顔を出す。

 ころころと表情の変わる子どもを相手に、毎日ハラハラドキドキという小野さん。「子どもたちから元気をもらっているので、体が元気なうちは引退しません。生涯現役です」。力強い笑顔で語った。

この記事は2017年05月13日付で、内容は当時のものです。

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